超富裕層が注目!世界のアート市場
5つ星マガジン読者のみなさまへ。
先行きが見えない世界経済だと言われていますが、富裕層向けの海外オークションはますます盛況となっています。
そんな中でも特に有名な「サザビーズ」と「クリスティーズ」というオークションハウスではアート作品、美術品が活発に取引されているのです。
そこでここでは世界の超富裕層が注目しているアート市場について紹介していきたいと思います。
世界のアート市場の規模とは
すでに世界のアート市場は7兆円を超える規模となっており、その規模はますます拡大しています。
特にアメリカはそのうちの約40%ほどを占めており、3兆円ほどの市場規模となっていますが、それに対して日本の市場規模は300億円ほどと言われています。
つまり日本でのアートの市場規模はアメリカの100分の1程度しかないのです。
しかし主要先進国の資産額1億円以上という富裕層の数を見ていくと
- アメリカ 約1560万人
- イギリス 約230万人
- フランス 約180万人
- ドイツ 約150万人
- 日本 約210万人
となっており、そこまで大きな差はありません。
つまり日本ではまだまだ富裕層の中でもアート市場に対する関心が高くなっていないということを表しているのです。
富裕層がアート作品に注目している理由とは
では世界の富裕層はどういった目的、理由があってアートに興味をもっているのでしょうか。
富裕層のステータスとして
これは古来より世界各地で変わらない概念です。
経済的余裕があるということを形として表現するのに、価値のある芸術作品を保有するというのはもっともわかりやすい表現方法であったのです。「あの有名な作品を持っている」ということ自体がステータスになることにもなりますし、その人の知名度を高めるという効果もあります。
また、昔の芸術家は経済的に支援を行うパトロンに雇われているということが多くありました。富裕層が自分の権威を主張するために作品を作らせたということも多くあったのです。
流動的な資産として
欧米ではすでに1枚の絵画に500億円以上の値段がついて取引されているということがあります。
これはヨーロッパでは昔からある「アートは流動的資産」であるという考え方が関係しています。ヨーロッパでは長い歴史の中で隣国との間に戦争が起こることがたびたびありました。戦争や侵略によって自分が住んでいる家、土地、国がなくなってしまうということがあったのです。そうなってしまうとすべての資産を失ってしまうことになります。
そこで資産家たちはどの国でもある程度の価値を保つような「宝石」「絵画のような美術品」を所有しておき、危険になった際にはそれだけを持って逃亡するということを心掛けるようになったのです。それさえあれば逃亡先でも安心ということです。
こういった守備的な考え方で美術品を持つということは日本人にはあまりありません。日本は四方を海に囲まれているために他国、他民族から国土を侵略されるということがほとんどありませんでした。そのため資産と言えば「土地」と考えることが多かったのです。
美術品はあくまでも富裕層や権力者のステータスであったり、個人の趣味として所有されることが多かったというのはそういった理由のためです。
投資対象として
美術品自体の価値が大きく下がることがない、価値が上昇する可能性もある、ということから「投資対象」として美術品を所有するという考え方も富裕層の中にはあります。
特にこの考え方は欧米以外の地域で急激に高まっています。2017年には当時ZOZOTOWNの経営者であった前澤氏がバスキアの絵画を120億円以上で購入したということもありますし、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品を500億円以上落札したのもサウジアラビアの王子でした。
特に中東地域では数十年後に石油が枯渇するということに向けて、国をあげての観光地化計画が進められており、美術館が建設されているということもあります。
美術業界で話題になったニュースとして2017年にアブダビでオープンしたルーブル美術館の支店である「ルーブル・アブダビ」があります。「ルーブル」という名称を使用するためにフランスに対して4億ユーロ(約530億円)を支払っただけでなく、ルーブル美術館からの作品の貸し出しや展示会などを行う際の指導料なども含めて30年契約で10億ユーロ(約1320億円)が支払われたとされています。
ダ・ヴィンチの作品のように買い集められた美術品がこちらのルーブル・アブダビに展示されるということもあって大きな注目を集めています。
欧米では美術品はキリスト教文化を根底に置いたものも多いのですが、中東やアジア地域ではあまりそういった概念はなく、純粋に「美術品の価値」として投資をすることが多いということもあります。同時に新興富裕層と呼ばれる、最近富裕層になったという人たちの半数以上はアジア地域の人と言われています。
これからはこういった東アジア、東南アジアの富裕層もアート作品の収集に関わっていくことが予想されており、世界的にアート作品が投資対象としてさらに注目されていくと考えられています。
美術品、アート作品をオークションで入手する方法は
美術品、アート作品を購入する方法としては「オークションで落札する」「古美術商などで購入する」「アートファンドで購入する」といった方法があります。
まずはそれらのうちオークションで購入する方法を紹介していきます。
アート作品が取引される2大オークションハウスとは
高額なアート作品が取引される世界的に有名なオークションハウスが2つあります。まずはそれらについて紹介していきます。
「サザビーズ」
こちらは1744年に設立されたという世界最古のオークションハウスです。資産家であったサミュエル・ベイカー氏がジョン・スタンリー卿の図書館に所蔵していた貴重な本を売却するにあたって設立されました。当時貴重な本を所有することは貴族としてのステータスでもあったため、これらの本は高額で取引されることとなりました。これが本格的なオークションの起源とされています。
1983年にアメリカの資産家に買収され、1998年には公開会社となりました。現在は毎年20億ドル以上の売り上げがある世界でもトップクラスのオークションハウスとなっています。
「クリスティーズ」
クリスティーズは1766年にイギリスの首都ロンドンで設立された歴史あるオークションハウスです。
サザビーズとは長年にわたって競い合って成長してきたのですが、近年は世界46ヶ国にオフィスを構えて、世界各地で年間350回以上のオークションを開催している世界最大のオークションハウスとなっています。取り扱い品目としてはアート作品を中心に置きながら、宝石、宝飾品、時計、家具、楽器など多岐にわたっています。
オークションの参加の仕方
まずオークションが開催される場所や日程を確認します。サザビーズやクリスティーズの公式サイトで公開されていますので、確認しておきましょう。
次にそれぞれのオークションに出品される作品の情報を確認していきます。どういった作品が出品予定なのか、作者や予想落札価格などが詳細に掲載されていますので、予算内で購入する目星をつけておくと良いでしょう。
ただし、ここでの価格はあくまでも予想です。実際にはそれよりも大きく上がる場合もあるので、それも想定しておく必要があります。
オークションが開催される3日ほど前にはオークションが開催される現地ですべての出品作品が展示されるプレビューが行われます。ここでさらに自分が参加しようとしている作品をチェックすることになります。こういったオークションでは一度落札するとキャンセルや返品はできないため、必ず自分で確認しておく必要があります。
入札(ビッド)の参加の仕方は大きく分けると4つの方法があります。
- 現地の会場で番号札を挙げて入札する「会場ビッド」
- インターネットを利用してのオンラインで入札する「オンライン・ビッド」
- 電話で入札を行う「テレフォン・ビッド」
- FAXなどで希望額を送る「書面ビッド」
です。
イメージとしては現地の会場で番号札を挙げている方法が強いかもしれません。
商品を落札することができればオークションハウスから請求書、送金方法の案内、作品の輸送指示書などが送付されてきます。それらに従って入金を行い、作品を輸送してもらうことになります。
オークションの参加に不安がある場合などは公式店舗を利用することをおすすめします。日本でも帝国ホテル内にサザビーズが公式店舗を2019年にオープンさせています。こういった場所で入札の仕方などオークションに関するさまざまなサポートを受けることができるようになっているのです。
オークションへは出品することもできる
自分が所有している作品を出品するということもできます。その場合はオークションハウスに作品の画像や作家名、作品名、サイズなどのデータや証明書などの書類を送付します。
するとオークションハウスが予想落札価格を提示してきますので、納得すれば出品委託契約書が送付されてきます。それらの書類と作品をオークション開催の2ヶ月前までに現地に送れば出品が完了ということになります。
オークション以外の購入方法とは
オークション以外でも美術品は購入することはできます。
昔からの方法として古美術商から直接購入するという方法があるのですが、こちらは古美術商の信用と、こちらの美術品を見る目がすべてになります。悪質な古美術商の場合は粗悪な美術品を高額で販売していることもありますので注意が必要です。
また、近年ではアートファンドで美術品を購入するということもあります。ここではアートコンサルタントなどが注目を集めている美術品を選び出してくれたり、購入に関してもアドバイスをくれることがありますので安心して購入することができます。初めて美術品を購入するという人にはこちらがおすすめです。
美術品、アート作品の購入に関するメリットとリスク
美術品、アート作品の購入には色々なメリットとリスクがあります。
ここでは上記では述べてこなかったメリットやリスクについて紹介していきます。
節税効果としても期待ができる
日本では平成27年に国税庁が資産の範囲に対して変更を行いました。「時間の経過によって価値の減少しない資産(減価償却資産)」の範囲が見直されたのです。これによってそれまで「20万円未満」で取得した美術品にしか認められていなかった減価償却の金額が「100万円未満」となったのです。
美術品の中でも絵画であれば償却期間は「8年」となっており、節税として利用することができやすくなったのです。これは「法人」「個人事業主」「不動産所得がある」という人であれば適用される制度ですので、当てはまる場合は投資対象としてだけではないメリットが増えたことになります。
換金リスクがある
美術品は資産としてとらえられるものですが、すべてがすぐに市場で換金できるというものではありません。
富裕層の投資対象としては「金」や「土地」「宝飾品」などがありますが、これらは比較的換金性が高いものです。しかし美術品はすべてがすぐに換金できるわけではないのです。
例えば、ある画家が描いた絵画を自分が気に入って1億円で購入したとします。現金のやりくりに困った際に、その絵画がすぐに1億円で売れるかとなるとそれは確実性はありません。「金」などであればその時のレートですぐに販売できるのですが、美術品はこういった換金リスクがあるということを知っておかなければいけません。
価値の変動リスク
美術品はその作品を作成した作家の人気、知名度、信頼度、ブランド力などによって価格は大きく変動します。これらは新たな発見などの事象や時代の経過によっても変動することが多いものです。購入した時点では人気のある作家の作品で高額で取引がされていたとしても時代の経過によって価値が変動するリスクもあるのです。
ただし、必ず価値が下がるというわけでなく、逆に価値が大きく上昇するという場合もあります。そのため「美術品の価値は変動する」ということをしっかりと覚えておくということが重要になるのです。
まとめ
日本では美術品やアート作品の関心が欧米よりも低かったのですが、近年その関心は急激に高まってきています。
ステータスとして、宣伝効果として、投資対象として、節税対策として注目を集めるアート市場は超富裕層の関心の的となっているのです。
ぜひそんなアート市場に目を向けてみましょう。