美しい北欧4か国をリージェント セブンシーズクルーズで巡るラグジュアリーな夏の旅(後編)
船上のテラスで朝日を眺めていると、島が徐々に近づいてきます。バルト海の風は夏でも冷たく13度ほど。日本の秋のような澄んだ空気が流れます。乗船しているセブンシーズ スプレンダーの今日の寄港地は、スウェーデンで一番大きな島、ゴットランドです。
北欧の朝は晴れていても太陽は弱々しく、とはいえ、朝食はテラスで取るのがクルーズの楽しみのひとつです。ヴィノワズリやドーナッツ類だけでも十数種、ジャムやフルーツ、キッシュ類のおしゃれなディスプレイに、広いブュッフェ会場を回るのもワクワク感満載のひととき。朝からノンアルカクテルも用意された豪華な朝食を満喫しました。
スウェーデン一の大きな島、ヴィスビーの中世を訪ねる
朝食のあとは、クルーズ料金に含まれているゴットランド島を巡るエクスカーション「中世の町、ヴィスビーを訪ねる」をセレクト。「自転車でまわるヴィスビー」や「ゴットランドの博物館見学コース」などオプションも多数あり、体力に合わせて選べるようにハードなコースには、「坂が多い」などの丁寧な注意事項が記されています。また、有料のエクスカーションもあり、農場でシェフが食材の解説付きで料理をしてくれるコースが人気。こちらは即満席になったのだそう。興味津々だったのに参加できず残念でした。
港に迎えにきてくれた観光バスに乗りこむと、古都ヴィスビーをガイドさんとともに散策します。ヴィスビーはバルト海交易の中心で、中世にはヴァイキングの支配下となり栄え、ハンザ同盟時代の砦や城壁が今も残る中世の街並みは、世界遺産に登録されています。宮崎駿の『魔女の宅急便』のモデルにもなった街。オレンジの屋根が連なり、色とりどりの花々が咲き乱れる石畳の小路が迷路のように街に張り巡らされ、メルヘンの世界へと誘われます。
見どころは、廃墟となった13の教会。カフェやレストラン、ホテルになっている廃墟は、ヴィスビーならではの歴史遺産。なかでもヴィスビーの城壁内の中心である大広場に立つサンタカタリーナ教会は、滅びの美学を感じさせる不思議な魅力がありました。
船旅ならではの極上の過ごし方を
3時間ほどの散策を終えて船にもどると、ランチタイム。巻き寿司にハンバーガー、サラダやパスタなど、昼も充実のブュッフェへ向かいます。パスタの種類やソースの組み合わせは何種類もあり、その場で選んで調理をしてもらうスタイル。このころには気温も上がり、太陽燦々のテラスで海風に吹かれながら、イタリアのロゼワインとともにパスタを満喫。これぞクルーズならではの心地よさなのです。
船旅ならではの非日常感を存分に味わえるのが、クルーズ最大の醍醐味ともいえる、プールサイドでのまったり時間。チーク材のプールデッキには、大きな温水プールと2つのジャグジーが備えられています。
サイドには、さまざまなタイプのデッキチェアが配置されていて、好みの場所を確保。隣との空間は仕切りがあるので広々とした空間を独り占めできます。カップルシートもあります。日焼けしたくなければシェードのあるタイプ、陽の光を浴びたい人はプール際に席を取り、心身ともに存分に開放される時間を満喫。海の上でもネット環境は完備されているのでネットサーフィンを楽しんだり、読書や仕事、昼寝をしたり、ゆっくり流れる贅沢な時間を過ごします。
プールサイドのバーからは、タイミングよくドリンクや軽食のオーダーを取りきてくれ、いたれりつくせり。好みを伝えて作ってもらったカクテルを、太陽のもとで楽しむ気分はまさに極楽です。さらにプールサイドには、ハンバーガーやピザなどの軽食やケーキ、アイスクリームといったデザートまで盛りだくさんのブッフェも完備されていて、ディナーに支障がでないよう気をつけながらいただきます。
プールサイドでのんびり過ごす人がいる一方で、広いデッキを見渡すと、そこはミニゴルフやテニスをしたり、ランニングやトレーニング、ピラティスやヨガをする人々の活気であふれています。船内でもさまざまなアクティビティが行われていて、不動の一番人気はシェフによるクッキングスクールです。北欧の歴史講座やボードゲーム大会などもあり、硬軟取り混ぜたラインナップとなっています。ちらりとのぞいて興味がわかなければ、ほかのアクティビティへの移動も自由です。
無料のマッサージセッションに参加して、心身ともに思い切りほぐれるリラックスタイムを過ごしたあとは、背中や足の矯正、メディテーションなどにも顔を出せば、全身のメンテナンスもバッチリです。さらにスパでは、本格的マッサージやフェイシャル・ボディなど、エステのメニューが充実しており、海を眺めながらのネイルは贅沢気分に浸れます。
ハムレットの舞台、クロンボー城を訪ねる
翌日は、デンマークの首都・コペンハーゲン近郊の港町・ヘルシンオアに立つ、「ハムレット」の舞台としても知られる世界遺産の古城「クロンボー城」の見学ツアーに参加しました。寄港地はスウェーデン、ヘルシングボリ。いつものように港から観光バスに乗りこむと、なんとバスに乗ったまま、フェリーでデンマークに渡ります。ヘルシンオアからコペンハーゲンまでは、鉄道で45分ほど。時間が許せばコペンハーゲンにも立ち寄りたいところですが、今回は残念ながら断念しました。
5キロ先の対岸にスウェーデンの街・ヘルシンボリを臨むヘルシンオアは、バルト海海上の重要拠点。エリック7世王が海峡の通行税徴収のため、15世紀にクロンボー城を築きました。
「ハムレット」の「エルノシア城」として知られるクロンボー城は、シェークスピアファンが多く訪れる世界遺産。シェークスピア自身は訪れたことがないそうですが、北棟は王の住居、西棟は王妃の住居、東棟は王族の部屋や厨房、南棟は教会になっています。
北欧最大を誇る舞踏場や、1500年代にブリュッセルなどで制作された巨大なタペストリーの数々がみどころです。クロンボー城内では、城のあちらこちらでハムレットや王、王妃などに扮した人に遭遇でき、まるでテーマパークのアトラクション。「ハムレット」の重要な場面を再現したパフォーマンスもあるそうです。ちょうど夏休み中だったため、子どもたちと王やハムレットが会話を楽しんでいました。
船上の大コンサート
この日はスウェーデンに寄港ということで船にもどると、レセプションではスウェーデンの大スター「ABBA(アバ)」のコンサートが開かれ大盛況。次々とアバのヒット曲が流れると、どこからともなくどんどん人が集まって、いつのまにか大ダンス大会に。「ダンシング・クイーン」が始まると老若男女、全員で大合唱。さすがにアバは世界基準の人気者。誰もが一度は聞いたことがある曲ばかり。知らない人同士が肩を組んで踊ったり歌ったり、国籍に関係なく一体となって盛り上がれるのもクルーズならではの魅力なのです。
9泊で北欧4か国をまわる船旅も、いよいよ終わりに近づいてきました。“移動はラクラク、観光はゆったり”のスタイルで、普段あまり行く機会のない知られざる地に連れていってくれるのがクルーズ船の旅。船内で知り合ったゲストとは、国を越えて縁がつながり絆もできました。
最後の日、「この階段を降りるともう夢の世界に戻れない」と、思わず感傷的に。船に別れを告げながら、次はどのルートを回ろうか、誰もがそんな未来の予定を立てているに違いありません。
写真・文 山下美樹子
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