慶州（キョンジュ）

「屋根のない博物館」ともいわれる慶州は、新羅王朝の都として千年にわたって栄え、現在も街のあちこちに数多くの歴史文化遺産があります。韓国の人たちには遠足や修学旅行などでもなじみの場所で、京都や奈良のようなイメージです。

仏国寺・石窟庵（プルグクサ・ソックラム）

慶州でまず訪ねたいのが慶州市最高峰の吐含山（トハムサン）中腹に位置する仏国寺。1995年、ユネスコ世界文化遺産に登録された韓国最高の仏教芸術といわれる名刹です。創建時期は諸説ありますが、1970年代に現在の姿に復元されました。

国宝第23号の青雲橋・白雲橋。かつては下に蓮池があったので、人間界と仏の国をつなぐという意味から橋とよばれているそうです。

国宝第22号の七宝橋・法蓮橋。青雲橋・白雲橋とともに創建当時の姿が現在も残り、新緑や紅葉、雪景色など、四季折々に美しい風景を見ることができます。

王室の許しがないと作れなかったといわれる屋根付きの回廊。ここから阿弥陀如来を祀る極楽殿、大雄殿へと続きます。1時間ほどあれば、ゆっくり見て回ることができます。

写真提供：慶州市

国宝第24号の石窟庵は、仏国寺からさらに7kmほど奥にあり、1時間ごとにバスも出ています。花崗岩を切り出した洞窟寺院で、本尊の釈迦如来坐像のほか、多数の仏像が祀られています（仏像はガラス越しに拝観します）。 

大陵苑（テヌンウォン）

慶州市内中心エリアを歩いてみると、周囲にはたくさんの古墳が点在しています。慶州で最も規模が大きい大陵苑は、「慶州歴史遺跡地区」の一つとして、2000年にユネスコ世界文化遺産に登録されています。

国宝級を含む1万点以上の遺物が出土した天馬塚（チョンマチョン）は、内部が公開されています。ほかにも新羅第13代王を安置する味鄒王陵（ミチュワンヌン）や慶州最大の古墳、皇南大塚（ファンナムテチョン）など、23基の古墳が集まっています。

古墳が多く、のんびりとした雰囲気の慶州の町を歩いているだけで、癒されるような気がします。古墳の緑が瑞々しく輝く新緑の季節や古墳に雪が降り積もる冬をはじめ、桜の木も多いので、満開になる時期も見逃せません。

東宮と月宮（トングンクァウォルチ）

仏国寺・石窟庵は郊外に位置しますが、大陵苑エリアは市内中心地。ほかにも周辺には東洋最古の天文台と言われる国宝第31号の「瞻星台（チョムソンデ）」や新羅時代の別宮跡と人工池の「東宮と月宮」、国立慶州博物館など、見どころがたくさんあります。瞻星台と東宮と月宮は夜間にライトアップされるので、夜の見学も幻想的でおすすめです。

ごぼうキンパプ

2021年12月まで、大陵苑エリアから徒歩15～20分のところに慶州駅がありましたが、新線の工事が完了し、10kmほど離れた韓国高速鉄道（KTX）新慶州駅に鉄道の拠点が一本化されました。レトロな雰囲気の旧駅舎は今後も残される予定です。旧慶州駅前には慶州城東市場があり、名物のごぼうキンパプをはじめ、庶民的なグルメが楽しめます。 

安東（アンドン）

慶尚北道の道庁所在地で、韓国精神文化の首都といわれる安東。数多くの儒学者を輩出し、歴史と伝統が守られています。次に紹介する河回村（ハフェマウル）のほか、朝鮮5大書院に数えられる陶山書院（トサンソウォン）や屏山書院（ビョンサンソウォン）など、ユネスコ世界文化遺産に登録されている見どころがたくさんあります。

河回村（ハフェマウル）

「韓国の歴史的村落遺産」として、2000年にユネスコ世界文化遺産に登録された河回村。豊山柳氏の同族村として600年の歴史があり、当時の家屋が残る村内では、現在も人々が暮らしを営んでいます。

村を囲むように曲線を描く洛東江（ナクトンガン）に囲まれた村の風景を眺めていると、時間の流れがゆるやかに感じられます。

村内では、ここでしか見られない重要無形文化財第69号の仮面舞「河回別神（ハフェビョルシン）グッ」の常設公演が行われています。12世紀半ばから庶民によって演じられ、当時の社会をユーモラスに表現。毎年9月には、安東国際仮面舞フェスティバルが開催されています。

2020年12月、市内中心部にあった安東駅が移転し、旧安東駅の駅舎は2021年7月から文化空間として活用されています。旧安東駅周辺には市場や名物料理の通りがあり、なかでもおすすめは、韓国三大ベーカリーに数えられる1974年創業の「MAMMOTH Bakery」。ミシュランガイド韓国版にも掲載され、人気商品のクリームチーズパンが焼き上がる時間にあわせて次々とお客さんが訪れています。

新しい安東駅は、バスで約20分（車で10分）のところにある安東ターミナルに隣接しています。2021年1月にはソウル清涼里（チョンヤンリ）駅と結ぶKTXも開通して2時間で移動できるようになり、今まで高速バスが中心だったソウルからのルートが便利になりました。

上記の慶州や安東を訪ねるパッケージツアーは日本の旅行会社から発売されることがありますが、次に紹介する聞慶（ムンギョン）や浦項（ポハン）は、ツアーで行く機会があまりないかもしれません。聞慶には韓国の歴史ドラマの撮影地があり、浦項では最近の人気ドラマ撮影地として、韓国の人たちもたくさん訪れています。

聞慶（ムンギョン）

慶尚北道の北西に位置する聞慶。かつて嶺南地方（慶尚道）とソウルをつなぐ峠の道「聞慶セジェ」が知られています。炭鉱の町としても栄え、国内生産量2位を誇りました。閉山後は石炭を運んだ鉄路の一部にレールバイクが設置され、観光客がたくさん訪れています。

聞慶セジェ道立公園

現在は道立公園として整備され、第1関門から第3関門まで約6.5kmにわたる約2時間のコース。韓国の人たちにも人気の観光地です。

第1関門近くには時代劇の撮影が行われる聞慶セジェオープンセット場があり、景福宮や光化門など、朝鮮時代の風景が再現されています。春の桜や初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々の自然につつまれてリフレッシュできます。

聞慶には韓国で一番古い伝統窯があり、伝統的な作陶方式を守りながら、40名ほどの作家が作陶。毎年、窯元が一堂に会してオープンセット場の家屋で展示・販売する聞慶伝統茶碗フェスティバルを開催しています。

浦項（ポハン）

慶尚北道の東南部、慶州の北に位置する浦項。東海岸沿いにあり、ズワイガニなどの海産物が有名です。東洋最大の製鉄所を有する工業都市としても知られています。韓国最東端の日の出の名所やかつて日本人が暮らした漁師町など、見どころがたくさんあります。

虎尾串（ホミゴッ）

虎尾串という名前は、虎の形に例えられる韓半島の尾にあたる位置にあることから。海から現れたような手のモニュメントが印象的です。韓半島の最東端に位置し、韓国で一番日の出が早い場所で、初日の出の人気スポットです。

海から出ている右手に向かい合うように陸には左手のモニュメントがあり、新しい千年に希望を託して1999年に作られました。

九龍浦（クリョンポ）日本人家屋通り

1900年代に瀬戸内海周辺の漁師が移住し、多くの日本人が暮らしていた港町、九龍浦。当時日本人が住んでいた家屋を復元し、日本人家屋通りとして保存しています。

2019年にドラマの撮影地として使われ、ドラマの人気とともに多くの観光客が訪れるようになりました。

各地へのアクセス

・慶州（慶尚北道慶州市）

ソウル駅から新慶州駅までKTXで約2時間、ソウル高速バスターミナルから慶州高速バスターミナルまで約3時間30分、東ソウル総合バスターミナルから慶州市外バスターミナルまで約4時間

・安東（慶尚北道安東市）

ソウル・清涼里駅から安東駅までKTXイウムで約2時間、ソウル高速バスターミナル・東ソウル総合バスターミナルから安東総合バスターミナルまで約2時間40分～3時間

・聞慶（慶尚北道聞慶市）

ソウル高速バスターミナル・東ソウル総合バスターミナルから店村（ジョムチョン）市外高速バスターミナル（聞慶）まで約2時間20～40分

・浦項（慶尚北道浦項市）

ソウル駅から浦項駅までKTXで約2時間30分、ソウル高速バスターミナルから浦項高速バスターミナルまで約3時間40分、東ソウル総合バスターミナルから浦項市外バスターミナルまで約4時間

(※通常時は仁川国際空港から各地へのバスが運行されていますが、現在は運休・減便などイレギュラーな状況のため記載していません。)

また自由に渡航できるようになったら、韓国旅行の定番、ソウル・釜山から少し離れて、ぜひとも地方にも足をのばしてみてください。交通が便利な場所ばかりではありませんが、少々不便なことも旅の醍醐味。新しい景色に出会い、心身ともにリフレッシュできることでしょう。