【Mr.Xの財産管理の最前線 第5回】庚子(かのえね)の2020年、相場はどう動く?
年が明けて、社会は大きく動き始めています。
2020年はどんな年かというと、干支は庚子(かのえね)、次の波を作り始める年です。
2020年は東京オリンピックが開催される記念の年でもあります。
このような年の金融相場が今後どのようになる可能性があるのか、今回は2020年の相場について解説したいと思います。
Mr.X
1988年より金融の最前線にてクライアントの資産管理、運用提案を行うプライベートバンカー(PB)。
職務経歴は、1988年より大手証券会社に約22年、フランス系のPBに約2年、大手メガバンクとイギリス大手銀行とのジョイントベンチャー組織に5年弱勤務し、現在はIFAとして独立、IFA事業会社に個人事業主として所属している。
2020年『庚子(かのえね)』とはどんな年?
最初に冒頭の2020年の干支、『庚子(かのえね)』にまず注目してみます。干支の組み合わせは全部で60種類あり、60種類の中で順番があって、その中で37番目が「庚子」です。干支の干や支にも五行(木・火・土・金・水の5つ)があるのですが、まずは「庚(かのえ)」の「か」は「金」を意味し、「子」は、「水」を表します。五行は、木・火・土・金・水の5つの順番が大事なのですが、「金」と「水」の組み合わせはちょうど隣同士になる組み合わせなので、この隣同士の組み合わせを「相生」と言います。相生は「相性」の語源とも言われ、相性のいい組み合わせで、よい組み合わせだと言われています。ここ最近は相生の年というのがありませんでした。2014年の「甲午(きのえうま)」の相生以来6年ぶりです。
ただし、もう一つ考えなければなりません。「子」は十二支の中では一番目。種を表し、その中で芽が出始める状態を意味します。庚はどうかというと、成長が終わった状態を意味します。従って、これまでの流れが終わり、次の流れを作り始めるという状態を表しています。
新たな良い流れを構築するのに絶好の年という意味で、良い年であると考えます。
世界経済の成長率(実質GDP伸び率)はどう動く?
では本論の経済のグローバル環境を考察します。
IMFは1月発表の「世界経済見通し」で、世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を昨年10月に発表した見通しから2019年と2020年はそれぞれ0.1ポイント、2021年は0.2ポイント下方修正し、2019年に2.9%、2020年に3.3%、2021年に3.4%としました。2019年を底に回復していくシナリオは変更ありませんでした。下方修正された要因としては、インドの成長予測が大幅に引き下げられたからです。
ただし、中国の2020年の成長見通しは上方修正されました。米国との間で第1段階となる経済・貿易協定が署名され、短期的な景気循環の弱さが緩和するとの見込みからです。しかし、米中の経済・貿易に関する広範な未解決案件や、中国国内の金融規制の強化が、引き続き経済活動のおもしになるとも分析しています。
製造業の活動が安定化する兆候と世界的な金融緩和の動き、さらに米中貿易交渉に進展がみられる点などから、世界経済が深刻な結果に終わる可能性は薄らいできている、とみています。しかし、同見通しは、世界経済は下振れリスクが依然として優勢とみなしています。
これからの景気はどう動く?
OECD(経済協力開発機構)の景気先行指数は、速報値ベースで2018年の4月に停滞局面に入り、2019年10月までで19カ月連続となりました。2015年の17カ月、2008年の21カ月に匹敵する長期間となっています。しかし、今回はこれまでとは違い、実体経済が危機的な状況に陥ってはおらず、米国などの先進国の雇用環境は引き続き堅調となっています。
地域別に見る2020年世界の景気
それぞれの地域を見ると、米国は、景気拡大が昨年末現在で126カ月(過去最長)継続しており、1879年以降の景気回復局面(29回)の中で、最長となっています。実体経済(個人消費、強い労働市場)が堅調であることと、再度金融緩和に政策変更したからだと考えられます。また株式市場が堅調であることも消費をサポートしています。
ユーロ圏は、引き続き低成長が続く見通しです。外需への依存度が高いドイツの製造業の景況感は、世界的な貿易の停滞により悪化していましたが、ようやく安定の兆しがみられます。一方、サービス業の景況感は弱含みし始めています。英国のEU離脱問題、米国との自動車関税発動問題などを勘案すれば、低成長が長期化する可能性があります。
日本では、消費増税の影響は、ポイント還元等の対策の効果もあり、比較的に小さいものとなりました。年末に閣議決定された総合経済対策もあることから、公共投資が景気の下支えとなる可能性が高いと考えます。
中国は、依然として外需の減速、米中貿易交渉の不透明感により、景気の減速は続く可能性が高いのですが、米中第一段階の合意等から、大幅な悪化は回避される可能性が高いと思われます。
金融緩和政策の継続における影響
これまでの解説については、景気の一般的な見方を示しました。金融市場を考察する際に基本となる景気動向が一番の要因となるからですが、世界経済は、製造業等外需の景気後退要因を金融緩和によって個人消費等内需への影響を最小限に留める政策をとることで、金融市場への悪影響を回避してきました。
本来金融市場は、景気後退局面ではその状況を織り込む動きをするものですが、現状は、企業業績が伴わないにも拘らず、株式市場は新値を更新し続けています。この過度に非伝統的な政策である過剰な金融緩和を長期間継続してきたことから、一方で副作用も生じており、今後金融緩和が続くのであれば、さらに民間債務・クレジットバブルが増大することになり、将来的に世界の金融システムが大きく不安定化する可能性が出てきます。ただし、現状はまだそこまで懸念する必要がないのかもしれません。当面、景気の後押し、金融市場を安定させるためには、米国を筆頭に金融緩和政策の継続が必要なので、世界的に低金利が続き、米国も金利低下からドル高になりにくく、相対的に株式の魅力が増す可能性が高いと思われます。
様々なリスクが存在する中での投資について
今年は、地政学的リスク、貿易関税に伴うリスク、世界貿易のさらなるダウンリスク、金利の急上昇リスク等と金価格を横目で睨みながら、金融緩和、財政政策等に期待して投資することになります。一度何かリスク要因が顕在化した場合は、比較的大きな調整が入るものと考えておいた方がよいと思われます。しかし、リスクがそれほど大きくならないようであれば、現在の緩和資金や、キャッシュで滞留している資金が株式相場を押し上げることになると考えます。
Mr.Xの一言
干支の庚子を考えると、これまで継続されてきたものが終わり、新たな流れが構築されるのならば、この金融緩和政策の限界が訪れ、新たな金融政策が必要となるのでは、とつい考えてしまうのですが、どうか今年一年、皆様にとって良い年となることを切に願います。
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