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亜熱帯の島で醸される唯一無二の島酒。奄美黒糖焼酎の極上の愉しみ方

亜熱帯の島で醸される唯一無二の島酒。奄美黒糖焼酎の極上の愉しみ方

鹿児島県最南端の奄美群島で造られる、奄美黒糖焼酎。奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島で26もの蔵が操業し、全国でも奄美群島地域だけに製造を許された唯一無二の島酒です。島が違えば水も異なり、個性も様々な亜熱帯の島酒・奄美黒糖焼酎が生まれた背景や、より美味しく味わうための愉しみ方を、奄美黒糖焼酎語り部の石原みどりがナビゲートします。

奄美黒糖焼酎のなりたち

本格焼酎の原料の中でも30kg単位で取引される黒糖は最も高価な部類

奄美の島々では、外界に閉ざされた島の環境で貴重な食料を長持ちさせるために、様々な発酵食品が発達。かつては焼酎も自家醸造されていました。身近な雑穀を利用した酢や味噌などの調味料をはじめ、17世紀に琉球から伝わったサツマイモからは神事のお神酒(みき)や、椎の実や粟を麹とした芋焼酎が造られました。また、猛毒がありそのまま口にすることのできない蘇鉄の実や幹までも発酵させることで毒抜きし、味噌や焼酎造りなどに利用していました。このような発酵技術の蓄積が、米麹と黒糖を原料とする現在の黒糖焼酎造りの土台となりました。

『南島雑話』で描かれる江戸時代の焼酎造りの様子(資料画像貸出:奄美市立奄美博物館)

奄美大島にサトウキビが伝わったのは17世紀初めのこと。江戸時代に奄美大島へ遠島された薩摩藩士の名越左源太(なごや・さげんた)が記した『南島雑話』にサトウキビの絞り汁を薄めて用いる「留汁焼酎(とめじるしょうちゅう)」の記述がみられますが、年貢として納めるべき黒糖を使った焼酎造りは藩によって固く禁じられ、本格的に黒糖が焼酎造りに使われるようになったのは戦後になってからのことでした。

サトウキビから黒糖を作る製糖工場(奄美大島)

太平洋戦争敗戦後、奄美群島は日本本土から行政分離され8年間米軍の統治下におかれました。本土との流通が制限されるなか、売り先がなくなり余る一方の黒糖を焼酎造りに活用するようになります。そして、昭和28年に奄美群島が日本復帰する際に、黒糖を焼酎造りに利用していた経緯が考慮され、酒税法の特例として、一次仕込みに米麹を使用することを条件に黒糖を使った焼酎造りが奄美群島だけに認められたのです。

世界自然遺産候補地・奄美の自然と食文化

巨大なシダ植物・ヒカゲヘゴ の群生(奄美大島)

鹿児島本土と沖縄本島の中間に位置する奄美群島。国内の亜熱帯北限域にあたり、国の天然記念物に指定されるアマミノクロウサギなどをはじめとする希少種などの生物多様性が評価され、世界自然遺産の候補地としても注目されています。

アオサ摘みの風景(徳之島)

春先になると海岸は海藻のアオサで緑に覆われ、浜辺でおバアたちがアオサを摘む姿は奄美の春を感じさせる風物詩。干潮時の潮溜まりで貝やタコを捕まえる漁の際は、テル(籠)をかついだ高齢者が大活躍します。浜で拾ったアオサの天ぷらやアオサを入れた卵焼き、マガキガイの塩茹では、黒糖焼酎にもぴったりの酒肴になります。

マガキガイの塩茹で(沖永良部島)

島々の水質は島ごとに異なり、山がちで森が豊かな奄美大島と徳之島は軟水に恵まれ、焼酎も原酒の風味がそのまま活きたまろやかな味わいに。サンゴ礁が隆起してできた喜界島・沖永良部島・与論島は、石灰質の土壌由来の硬水を仕込み水に使い、酵母が豊富なミネラルを餌に香り豊かに発酵します。

奄美黒糖焼酎の極上銘柄紹介

◇長雲一番橋(奄美大島・山田酒造)

黒糖に熱を加えず常温の水でゆっくり溶かしてから仕込み、黒糖の芳醇な香りとコクをぎゅっと閉じ込めたような味わいに仕上げています。30度。

 

◇まーらん舟(奄美大島・富田酒造場)

薪やサトウキビの搾りかすを焚いた火でゆっくりと煮詰めた、徳之島徳南製糖の手作り黒糖を使用。原料由来の豊かな香りとコクのある味わい。33度。

 

◇南の島の貴婦人(喜界島・朝日酒造)

蒸留の初めに垂れる香りと味の濃い原酒を44度に調え、瓶詰め。南の島の貴婦人と呼ばれる白い蝶・オオゴマダラをイメージさせる華やかな香気は、初留取りならではの味わいです。

 

◇小夜曲 セレナーデ(徳之島・高岡醸造)

黒糖と蔵独自のパパイヤ酵母を使った独自のラム酒の製法を確立した高岡醸造によるゴールドラム。樫樽で20年熟成させ、深い奥行きのある香りとまろやかな味わいが魅力です。35度。

 

◇白ゆり(沖永良部島・沖永良部酒造)

3社が造る原酒をブレンドし、樫樽貯蔵した重厚感ある味わい。黒糖を米の2倍の量使用し常温で溶解する製法により、芳醇な余韻をもたらしています。40度。

 

◇島有泉(与論島・有村酒造)

宴に集まった人が一人ひとり口上を述べ、盃を一気に干す島の飲酒作法「与論献奉」に合わせ、30度が基本の黒糖焼酎としては低めの20度に割水されており、ライトな味わいです。

奄美黒糖焼酎を手に入れるには

酒屋まえかわ

奄美群島一の繁華街・屋仁川通りにほど近い、街の酒販店。壁一面に黒糖焼酎が並び、どれにしようか迷ってしまうほど。合わせたい食事や好みを伝えると、店主の前川さんが親身に相談に乗ってくれます。電話注文で全国に配送可能。
●酒屋まえかわ(奄美市名瀬6-10) TEL 0997-52-4672

 

瀬戸内酒販

黒糖焼酎のweb通販なら一番の品揃え。店主の義永さんは奄美群島の全蔵を直接訪問して造り手の思いを聞き、飲み手へ伝えています。奄美大島南部の古仁屋にある実店舗では、なかなか飲めない希少銘柄も試飲提供しています。
●瀬戸内酒販(瀬戸内町古仁屋大湊3) https://www.rakuten.co.jp/amami/

魅力を引き出すひと工夫 水の選び方と美味しい入れ方

硬水、それとも軟水?水の選び方

焼酎を割る際のミネラルウォーターには、どんなものが向いているのでしょうか。水1,000ml中のカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値を「硬度」といい、硬度100mg/l以上の水は「硬水」と呼ばれます。

欧州産ミネラルウォーターなどに多い硬水は、ミネラル由来のずっしりとした飲みごたえが特徴。そのまま飲むには良いのですが、焼酎を割るとツンとしたアルコールの尖り感が出てしまいます。

国産ミネラルウォーターの多くは、さっぱりと飲めてまろやかな口当たりの軟水。素材そのものの風味が素直に出るため、焼酎を割る際は硬度が低めの水をおすすめします。

ちょい水足しで香りを引き出そう

本格焼酎を水割りする際の割合に決まりはなく、その日の体調や好みで自由に決めてOK。合わせる料理や銘柄ごとに、好みの割合を探してみてください。奄美黒糖焼酎は、25度が主流の鹿児島の芋焼酎などと比べ30度が主流と度数が高めで、地元では55程度の濃いめに割って飲まれることが多いようです。

また、ここで紹介したような度数高めのプレミアムな焼酎の香りを大切に味わうには、ロックやストレートに少しだけ水を加える飲み方がおすすめ。水と反応してふわりと花開く香りの世界をお愉しみください。

ソーダ割を爽やかに仕上げるコツ

蒸し暑くなる初夏から夏にかけて、ぴったりの飲み方がソーダ割。香りを逃さず爽快に仕上げるコツは、炭酸の泡を刺激しないこと。グラスの縁と氷の間に隙間ができるように氷を積み上げ、グラスの氷を濡らすように黒糖焼酎を注ぎ、マドラーで数回混ぜ合わせてなじませたら、氷とグラスの隙間の空間を狙って静かに炭酸を注いでください。仕上げにマドラーでひと回しすれば、泡とともに香りが立ち上がります。

新納酒造「ひとしずくの大切さ」

沖永良部島の新納酒造(にいろしゅぞう)へ伺ったときのこと。減圧蒸留機の釜側面に、ソムリエの田崎真也さんが「ひとしずくの大切さ」と記したサインを見つけました。
一滴の焼酎に込められた造り手の真摯な思い、コメやサトウキビなどの原料そのものが秘める生命のエネルギー、タンクで眠る原酒に時がかける熟成という名の香りの魔法……「ひとしずく」ということばから、さまざまなイメージが浮かんできます。
この蒸留機を使った「をちみづ」は、古来より月にあると伝えられる伝説の若返りの水に由来する銘柄。ふんわりとした奥行きある香りと、減圧蒸留の軽い飲み口が魅力です。クラッシュアイスとワイングラスで、香りを楽しむ飲み方もおすすめです

この他にも、奄美群島の5つの島に26の蔵があり、造り手や焼酎の個性もさまざまです。より深く知りたい方は、奄美群島の黒糖焼酎蔵めぐりエッセイ『あまみの甘み あまみの香り』をご覧ください。

『くじらとくっかるの島めぐり あまみの甘み あまみの香り
〜奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島と黒糖焼酎をつくる全25蔵の話〜』
鯨本あつこ、石原みどり著/2016年8月 西日本出版社/1,400円(税別)
●西日本出版社書籍紹介
http://www.jimotonohon.com/annai/a1022_kokutou.html

【筆者プロフィール】
●写真・文 石原みどり(いしはら・みどり)
鹿児島県酒造組合奄美支部が認定する「奄美黒糖焼酎語り部」第7号として、奄美群島と黒糖焼酎の魅力を伝えるトークイベントや焼酎テイスティング会など活動。
●著書:『あまみの甘み あまみの香り』(西日本出版社)
●ホームページ: https://www.ishiharamidori.com/

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