【できる男の5つ星おしゃれ術 第4回】品高き冬のおしゃれに コート選びもぬかりなく
冬のおしゃれは、コートで決まるといっても過言ではない。大人の男として押さえておくべきポイントやコートならではの高級生地を知っておくと、人と違った冬のコーデが楽しめるはず。オーダーメイドスーツ「ゑみや洋服店」三代目店主 江見真也さんに、5つ星マガジン読者のためのワンランク上のおしゃれなコートについて話を聞いた。
江見真也(えみ・しんや)
ゑみや洋服店 三代目店主
「正しく、楽しく、かっこよく」をモットーに、オーダーメイドスーツやシャツなどの洋服を販売する。「あなたのモテるを創るスタイリスト」として、ビジネスファッションの着こなし方を、インターネットラジオや自社HP、YouTubeにて、発信している。
一生着られる「ロロ・ピアーナ」のカシミヤのコート
コートを選ぶときは、まずはシンプルな、そして長く着られるものを1着手に入れましょう。こちらは、わたしが普段来ている、イタリアの高級服地メーカー「ロロ・ピアーナ」のカシミヤで作ったシングルチェスターコートです。ビジネスシーンでも、冠婚葬祭にも着られるグレーを選びました。最高級品質のカシミヤや最高級ウールを扱うイタリアの服地メーカーですが、その生地は非常にしなやかで柔らかく、大人の男性を中心に人気があります。気品のあるおしゃれを追求するのにぴったりです。
今年は、ダブルのコートもおすすめです。男性っぽく力強いデザインで、個性も表現できます。こちらのタイプには、胸ポケットも付けました。コートの胸ポケットは単なる飾りではありません。これは、“おしゃれだから”というよりも、もともとグローブを入れるためのポケットなのです。現に、冬にイタリアを訪れると、コートの胸ポケットにグローブ(手袋)を入れている男性が多いことに気づくと思います。イタリアではもっぱらそれが一般的です。
日本のメンズ手袋はごつごつしたものが多く、胸ポケットには入らない、あるいは入ったとしてもあまりおしゃれには見えないかもしれません。
イタリアには、メンズにも薄手で柔らかい皮のグローブがよく売られていますので、そういったブランドのものを是非手に入れて、おしゃれさも演出したいところです。入れるときには、指の方を上にしてくださいね。
超・最高級繊維、ビキューナ
わたしがコートを作るときにおすすめしたい生地メーカートップ3は…スコットランドの「ジョンストンズ」、イタリアの「ピアチェンザ」、そして先ほど登場した「ロロ・ピアーナ」です。最高級カシミヤや最高級ウールを取り扱う服地メーカーですが、なかでも、「神々の繊維」と呼ばれる“ビクーニャ”という動物の毛を用いた生地“ビキューナ”は特別です。
ビクーニャは、ペルーとアンデスの山の上に生息するアルパカの仲間で、黄金色の非常に柔らかい毛を持っています。その毛で作った繊維ビキューナの毛は極細で、あらゆる毛製品のなかでも最高級品とされています。一流ブランドメーカーで販売されているビキューナのビジネススーツは650万円、コートにすると高級車が一台買えるほどです。
一時は乱獲により絶滅が危惧されましたが、ペルー政府が保護区を制定したり、ロロ・ピアーナもペルーやアルゼンチンで保護の取り組みを行うことで、なんとか頭数は復活し絶滅の危機を逃れました。
非常に希少な生地なので、なかなか出会えませんが、見つけた折にはぜひ手に取ってその最高品質の手触りを体感してみてほしいと思います。
差をつけるなら「モエスマー」のボイルドウール
王室御用達のイタリアの老舗生地メーカー「モエスマー」。コート用の生地を多彩に扱っています。なかでも珍しいのは、“ボイルドウール”。分厚く生地を織ったのちに茹でて圧縮させています。目が詰まっているのでとてもあたたかく、ごわごわした風合いが個性的です。
メンズコートには、色味の映える既製品のコートがあまりありませんので、こういったオレンジや赤など鮮やかな色で作るのはオーダーコートの醍醐味です。わたしはこのグリーンで1着仕立てようと思っています。
こちらは、ジャケット生地で作った軽めのグレンチェック柄のコートです。シャツ襟に仕立て、春秋にも着られるカジュアルなコートも1着手元にあるとおしゃれに幅が出ます。
ブログにアップするやいなや、「同じものが欲しい」と問合せが殺到したのが、イタリア製ウール100%のこのコート。表地はベージュですが、裏生地のブラウンを活かしたかったので、あえて裏地を貼りませんでした。タイトなシルエットですが、ジーンズに合わせてもスーツに合わせても使える万能もの。軽くて暖かいので重宝しています。残念ながら同じ生地はもう販売されていませんが、似たような生地は毎年どんどん出てきますので、新作を探す楽しみも、オーダーコートならでは、です。
コートは裏地にもこだわる
生地によっては、あえて裏地を貼らない楽しみ方もありますが、人前で着脱する機会の多いコートは、裏地にこだわるとよりおしゃれ度がアップします。こちらは、最初にご紹介した「ロロ・ピアーナ」のコートの裏地です。高級感を持たせるため、光沢あるパープルのペイズリー柄をチョイスしました。
ほかにも、おどろくほど個性的な色や柄の種類があります。選ぶものによって、印象ががらりと変わるので、人と違うおしゃれを目指すなら、裏地も慎重に。なにより気品を大切にすることが、おしゃれな大人の男には欠かせません。
馬毛ブラシでクリーニング要らず
わたしはカシミヤのコートをクリーニングに出したことはありません。何日かに1回、柔らかい馬毛のブラシでブラッシングして、固く水を絞った布で裏側をさっと拭く程度です。
まずは、襟を立てて肩の部分を念入りに。襟の裏側、背中に前身ごろと、全体的に一方向にブラッシングします。縫い目にもほこりなどたまりやすいですから、忘れずに。よっぼど汚れたり、食べこぼしたりしない限り、この手入れで十分です。こうして長く大切に着ることも、おしゃれを楽しむ秘訣です。
防寒着というよりも、もはや冬のおしゃれに欠かせないアイテムのコート。10年、20年と長く着られるベーシックな1着と、個性的なもの、春秋ものとそろえておくと、ワンランク上のおしゃれの楽しみ方が増えるでしょう。