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世界からも注目される、「日本ワイン」の魅力(前編)

世界からも注目される、「日本ワイン」の魅力(前編)

最近、日本国内だけでなく世界からも「日本ワイン」が注目を集めています。かつては限られた地域で生産されていた日本発のワインですが、今では北海道から沖縄まで300場以上のワイナリーがあり、産地や品種によって造られるワインの種類もさまざまです。そんな日本のワインの現状と魅力を2回にわたりご紹介。お家でワインを楽しむことも多くなった昨今、ワイン選びのご参考にしてみてはいかがでしょうか?

日本におけるワインの歴史

室町時代後期に書かれた公家日記「後法興院記」に、「珍蛇(チンタ)」というお酒を飲んだということが記されています。これがスペインやポルトガルから伝わった赤ワインだったと考えられ、文献上初めて日本にワインが登場した記録であるといわれています。その後、オランダやポルトガルなどとの交易が盛んになるにつれ、ワインは全国に広まり知られるようになっていきました。ただ、日本では米から酒を造る習慣があり、飲み水も豊富だったため、果実からお酒や飲み物を造るという動きにはいたりませんでした。

江戸時代には甲州(山梨県)を中心にぶどう栽培が広まっていきますが、ワイン用ではなく生食・加工用でした。明治時代に入り、国の近代化を図るため明治政府は殖産興業の一環として、ヨーロッパやアメリカからぶどうの苗木を輸入し、山梨県をはじめ各地でぶどう栽培やワイン造りを奨励します。当時日本は米不足でもあり、米からの酒造りを節減したいという背景もあったようです。

産業用国産ワインの製造から近年のワインブームに至るまで

今では日本全国でその土地に適したぶどうが作られています (写真提供:サンマモルワイナリー)

1870年(明治3年)に山梨県甲府市に設立された「ぶどう酒共同醸造所」で、甲州種などを用いた国産ワインが日本で初めて産業用として製造されたのをはじめ、たくさんの人々が文献や外国人の指導をもとにワイン造りに挑戦しますが、ことごとく失敗に終わります。
1877年(明治10年)、日本初の民間ワイン醸造所が設立され、ワイン醸造法習得のため、日本人で初めてふたりの若者がフランスに2年間留学し、帰国後ワイン造りに注力します。しかし、技術不足や味が日本人の好みに合わず、苦戦を強いられます。一方、同時期より新潟県では日本の気候に合うぶどうの品種改良が重ねられており、1927年(昭和2年)に、「マスカット・ベーリーA」をはじめとする日本独自品種の開発に成功し、ワイン栽培・ワイン醸造に大いに貢献することになります。ただ当時は、本格ワインが一般家庭に普及するにはいたらず、「赤玉ポートワイン」のような甘味果実酒を中心に造られていました。

1970年(昭和45年)の日本万国博覧会の開催以降、海外ドラマや洋画などで海外の生活習慣や食文化に影響を受けたこともあり、日本の食生活はだんだんと洋風化。それにともない輸入ワインや国産のワインも普及していきます。その後1978年(昭和53年)の1000円ワインブーム、1980年代の「ボジョレー・ヌーボー」ブーム、1997年(平成9年)の赤ワインブーム、2010年代のワインバルなど、段階的なブームを経て、日本のワイン消費は急速に拡大していきます。一般へのワイン普及にともない、国内のぶどう栽培やワイナリーも急増しました。そして、各ワイナリーやメーカーの研究・努力もあり、今では国際的にも評価されるほど高品質のワインが造られています。

「日本ワイン」とは? 国産ワインとの違い

ワインは造られる産地、文化などを表現しているとても表情豊かなお酒のため、海外の多くの国では産地をとても大切にし、「ワイン法」で産地やぶどう品種などの表記を厳しく規定し、個性と価値を守っています。一方、日本では長年「国産ワイン」という表記で、日本国内で栽培・醸造されたワインだけでなく、輸入濃縮果汁や輸入ワインを原料としたワイン、海外から大型の容器で輸入し国内で瓶詰めしただけのワインなど、さまざまな製法のワインを包括していました。それが消費者にとっては分かりにくく、また誤解を招く呼称となっていました。

そのため、国税庁が201510月に定め、201810月から施行されたのが「果実酒等の製法品質表示基準」というワインのラベル表示のルールです。これはいわゆる国際規定にならった厳格な日本のワイン法にあたり、これにより「日本ワイン」という表示が正式に使われるようになりました。

前述の表示ルールにより、現在日本国内で流通するワインは大きく3つに分かれます。

  1. 「日本ワイン」=国産ぶどうのみを原料とし、国内で醸造されたワイン
  2. 「国内製造ワイン」=海外原料(濃縮果汁や輸入ワイン)を使用し、国内で製造したワイン
  3. 「輸入ワイン」=海外から輸入されたワイン

また、ラベルにも細かいルールがあり、表示できる情報が異なります。

  1. 「日本ワイン」⇒“日本ワイン”の表記、条件を満たせば産地・ぶどうの品種名・ぶどうの収穫年の表示が可能
  2. 「国内製造ワイン」⇒原材料名(濃縮果汁使用・輸入ワイン使用など)の表示義務、地名・品種等の表示不可
  3. 「輸入ワイン」⇒原産国の表示

参照)果実酒等の製法品質表示基準(国税庁作成「酒のしおり」より)

この表示ルールにより、国内外で「日本ワイン」が少しずつブランド化し、ワイナリーの品質向上や消費者の安心購買につながっているといえます。現在、国内で製造される全ワインのうち、「日本ワイン」の割合は約2割となっています。

日本で栽培している主なワイン用ブドウ

現在、全国各地で多種多様のワイン用ぶどうが栽培されています。2020年(令和2年)に発表された国税庁のデータ[原料用国産生ぶどうの概況/2018年(平成30年)調査]によると、国内で栽培されている品種と主な産地は下記の通りです。

ぶどう品種と日本の4大産地

<赤ワイン用ぶどう品種上位10種> ※( )内は主な産地、各割合は全生産量に対して

  1. マスカット・ベーリーA(山梨/山形/長野 ほか) 14.0
  2. コンコード(長野 ほか)8.6
  3. メルロー(長野/山梨/山形 ほか) 6.1
  4. キャンベル・アーリー(北海道/宮崎/岩手 ほか) 5.2
  5. 巨峰(長野/山梨/福岡 ほか) 2.4
  6. ブラック・クイーン(長野/山梨/山形 ほか) 1.7
  7. カベルネ・ソーヴィニヨン(山梨/長野/山形 ほか) 1.7
  8. ヤマソービニオン(石川/山形/岩手 ほか) 1.4
  9. ピノ・ノワール(長野 ほか) 1.2
  10. ツヴァイゲルト(北海道 ほか) 1.1

<白ワイン用ぶどう品種上位10種> ※( )内は主な産地、各割合は全生産量に対して

  1. 甲州(山梨/島根/山形 ほか) 16.0
  2. ナイアガラ(長野/北海道/山形 ほか) 12.7
  3. デラウェア(山形/山梨/大阪 ほか) 6.8
  4. シャルドネ(長野/山形/山梨 ほか) 5.5
  5. ケルナー(北海道/長野/新潟 ほか) 1.6
  6. ソービニヨン・ブラン(長野/島根/山梨 ほか) 0.8
  7. セイベル9110(山形 ほか) 0.7
  8. 竜眼[善光寺](長野) 0.7
  9. ポートランド(北海道 ほか) 0.6
  10. リースリング・リオン(岩手 ほか) 0.4

<日本の4大産地>

産地別では、山梨県/長野県/北海道/山形県が全国の生産量の中で約8割を占め、4大産地となっています。

・山梨県
ワイン生産量、ワイナリー数ともに全国1位。日本ワイン発祥の地で、夏から冬の気温差が大きく、降水量が少ないためぶどう作りに最適とされています。広範囲に渡ってぶどう栽培が行われており、「甲州」「マスカット・ベーリーA」など日本固有品種が多く作られています。

・長野県
ワイン生産量、ワイナリー数は山梨県に続き2位。標高が高く、朝晩の気温差が大きく降水量が比較的少ないため、アメリカ原産の「コンコード」や「ナイアガラ」、フランス・ボルドー原産の「メルロー」など多くの品種のぶどうが栽培されており、多種多様なワインが楽しめます。

・北海道
梅雨がない北海道は、湿気が少なく寒暖差が大きいため、「ケルナー」などヨーロッパ北部が原産のぶどうや、アメリカ原産の「ナイアガラ」の栽培に適しています。近年では高級赤ワイン用品種「ピノ・ノワール」も栽培され、注目されています。

・山形県
さくらんぼの産地として有名な山形県は、夏の暑さから9月以降に一気に冷え込み、その大きな寒暖差のため、高品質のぶどうが収穫できます。品種では「デラウェア」や「マスカット・ベーリーA」などが多く栽培されています。

※参照)国税庁「国内製造ワインの概況」より

注目される日本固有の品種

「甲州」をはじめ、日本固有のぶどう品種を使用したワインは、和食ブームで日本料理が人気の海外でも、料理に合うと高い評価を得ています。

  • 甲州 (原産地:山梨) 白ワイン用

甲州(写真提供:勝沼醸造)

1000年以上の歴史をもつといわれる日本の固有品種で、DNA鑑定の結果、約70%以上が欧州系のヴィニフェラと判明。シルクロードを通って中国の山ぶどう系品種が交雑して日本に来た東洋系欧州種です。2010O.I.V.(葡萄・ワイン国際機構)で品種登録されています。日本の白ワインで最も多く使われています(国税庁「原料用国産生ぶどうの概況」平成30年度調査)。甲州ぶどうから造られるワインは柑橘の香りに心地よい酸味と果実味、そしてわずかに感じる苦味があり、日本食とも合うため、海外での和食ブームに乗って世界から注目されています。

  • マスカット・ベーリー(原産地:新潟) 赤ワイン用

マスカット・ベーリーA (写真提供:勝沼醸造)

1927年、岩の原葡萄園(新潟県)の川上善兵衛が、アメリカ系のベーリー種と欧州系のマスカット・ハンブルグ種を交配して作り出した品種で、赤ワイン品種では日本一の生産量(国税庁「原料用国産生ぶどうの概況」平成30年度調査)です。2013O.I.V.で品種登録されていて、ベーリー系果実の甘い香りと穏やかな渋みが特徴です。

  • 山幸  (原産地:北海道) 赤ワイン用

山幸(写真提供:池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)

「山幸(Yamasachi)」は、北海道池田町直営ワイナリー「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」で独自に開発された、赤ワイン醸造用の日本固有品種です。「甲州」「マスカット・ベーリーA」に続き、2020年にO.I.V.で品種登録されたことにより、世界的な広がりが期待され、各方面から注目されている品種です。しっかりとした酸味と野趣あふれる香りが特徴です。

ほかにも「巨峰」(日本)や「竜眼」(長野)、「ヤマ・ソービニヨン」(山形)、「小公子」(福井)、「北の夢」(青森)など、研究や交配によって日本固有の品種が作られており、今後も注目と期待を集めそうです。

日本でも栽培される世界の品種

ヨーロッパやアメリカが原産地の品種も、日本で幅広く栽培されていますが、気候や産地により味わいが異なるため、それぞれの品種と産地の組み合わせによる違いも楽しめます。

  • メルロー  (原産地:フランス・ボルドー地方) 赤ワイン用

メルロー (写真提供:サンマモルワイナリー)

原産地のフランスのボルドー地方で最も多く栽培され、環境適応力が高いことから、世界各地で栽培されています。日本でも広い範囲で栽培され、成功しているヨーロッパ系の品種です。日本では長野県で多く栽培されています。

  • ピノ・ノワール  (原産地:フランス・ブルゴーニュ地方) 赤ワイン用

ピノ・ノワール (写真提供:サンマモルワイナリー)

フランス・ブルゴーニュ地方が原産地で、世界的に赤ワインの中でも人気の品種です。ストロベリージャムを思わせる香りを放ち、渋みの少ない果実味と酸味のバランスが取れた辛口が特徴です。雨の多い日本では栽培が難しいとされていましたが、ブルゴーニュ地方と緯度が近く気候も似ている本州最北端の下北半島で「サンマモルワイナリー」の「下北ワインRyo Classic2014」が日本ワインコンクールにおいて、ピノ・ノワールで初めて金賞を受賞したことから一気に評価が高まりました。近年、北海道でも栽培が増えています。

  • シャルドネ  (原産地:フランス・ブルゴーニュ地方) 白ワイン用

シャルドネ (写真提供:サンマモルワイナリー)

フランス・ブルゴーニュ地方が原産地の白ワイン用ぶどうです。環境適応力が高いため世界で栽培されています。また産地や気候の違いでさまざまな味わいが楽しめるので、国内でも幅広い地域で栽培されています。

  • ケルナー  (原産地:ドイツ) 白ワイン用

ケルナー (写真提供:サンマモルワイナリー)

冬の寒さに強く、マイナス10度まで耐えるとされる品種で、ドイツと気候が似ている北海道で一番多く栽培されています。「ケルナー」は甘口から辛口、スパークリングワインなどさまざまなスタイルで造られています。マスカットのような甘い香りやミントのような清涼感、フルーティーな味わいが人気の品種です。

日本では、デザートとしていただく食用のぶどうも国内外から評価される、高い品質を誇っていますが、ワイン用のぶどうも日本の気候に合わせて研究と品種改良が重ねられ、このように多くの質のよいぶどうが栽培されていることをお分かりいただけたかと思います。次回は、これらのぶどうから造られるおすすめのワインについてご紹介します。

<後編に続く>

(取材・文 滝野利喜雄)

<取材協力・写真提供先>

<参照出典>
国税庁HP「国内製造ワインの概況(平成30年度調査)」

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