世界からも注目される、「日本ワイン」の魅力(後編)
前編では、日本ワインの基礎知識として、日本ワインの歴史や産地、注目されるぶどうの品種などについてご紹介しました。後編では、受賞ワインのご紹介やおすすめの日本ワインをいくつかご紹介しながら、ますます魅力を増す日本ワインについてお伝えします。
増えつつある「日本ワイン」とワイナリー
日本国内のワイナリーの数
国税庁のホームページに掲載されている果実酒製造場の統計によると、2018年(平成30年)現在で、果実酒製造場は466場あり、その中でワインの生産・実績があるワイナリーは331場。さらにその後、2019年(令和元年)に41件、2020年(令和2年)に49件、2021年(令和3年)4月までで10件の酒類等製造免許(ワイナリー含む果実酒)の新規申請があり、ワイナリー数は毎年増えていっています。特に東北では東日本大震災復興予算を活用してのぶどう栽培やワイナリーの新規開場が増えています。
また、それぞれの産地風土の気候に合わせた品種の少数栽培や、欧米では一般的なカスタムクラッシュワイナリー(受託醸造所)も注目されつつあり、「日本ワイン」もますますその種類と可能性が広がっています。
「日本ワインコンクール」と「日本ワイナリーアワード®」
「日本ワイン」を選ぶうえで、ぜひ参考にしたいのが、「日本ワインコンクール」と「日本ワイナリーアワード®」です。「日本ワインコンクール」はヴィンテージを含めワイン単体を評価しますが、「日本ワイナリーアワード®」はワイナリー全体を評価するという特徴があります。
「日本ワインコンクール」は、2003年から開催され、数ある「日本ワイン」を対象としたコンクールです。毎年7月に開催され、ワイナリーはもちろん国内や海外のワインファンからも注目を集めていますが、残念ながら2020年度と2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止になりました。
「日本ワイナリーアワード®」は、「日本ワイン」の表示ルールが施行された2018年からスタート。「日本ワイン」を造るワイナリーを星の数でランク付けし、全国のワイナリーの目標にもなり、ワインファンや海外からも注目されています。4回目となる今年は6月4日に発表会・表彰式(一部オンライン参加)が行われ、258場の審査対象ワイナリーから5つ星を受賞した15場のワイナリーをはじめ、全196場が表彰されました。
※審査対象は設立またはぶどうの植え付けから5年以上経過した国内のワイナリー
2021年 5つ星受賞のワイナリー(15場)
ドメーヌ・タカヒコ(北海道)
山崎ワイナリー(北海道)
酒井ワイナリー(山形県)
高畠ワイナリー(山形県)
タケダワイナリー(山形県)
勝沼醸造(山梨県)
機山洋酒工業(山梨県)
サントリーワインインターナショナル(山梨県)
シャトー・メルシャン(山梨県)
ダイヤモンド酒造(山梨県)
中央葡萄酒(山梨県)
丸藤葡萄酒工業(長野県)
小布施ワイナリー(長野県)
Kidoワイナリー(長野県)
安心院葡萄酒工房(大分県)
※上記のほか4つ星、3つ星、コニサーズワイナリー(評価に値する個性あるワインを生み出すワイナリー)の受賞ワイナリーなど、詳細は下記公式ホームページをご参照ください。
●日本ワイナリーアワード® https://www.japan-winery-award.jp/
各ワイナリーではワインの通販をやっているところも多いので、気になるワインがあれば、一度お取り寄せするのもおすすめです。
「日本ワイン」をピックアップしてご紹介
2021年発売中の「日本ワイン」からおすすめのワインをピックアップしました。
山幸(十勝ワイン/池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
2020年11月、日本で3番目にO.I.V.(国際ブドウ・ワイン機構)で品種登録された「山(Yamasachi)」から造られたワイン。力強い酸味と野趣あふれる味わいが特徴です。
ブルーム(十勝ワイン/池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
ケルナー種由来の爽やかな柑橘類をイメージする果実の香りと際立つバランス感が特徴のスパークリングワインです。瓶内二次発酵法により、しっかりした泡と上品で繊細な味が楽しめます。
下北ワイン Ryo Classic(サンマモルワイナリー)
2020年の英国のワイン品評会で「下北ワインKanonロゼ」が金賞を受賞するなど、海外でも高く評価されている青森県・下北半島にあるサンマモルワイナリーが造る赤ワインです。2016年の日本ワインコンクールで、ピノ・ノワール品種で初めて金賞を受賞したことでも注目されています。ストロベリージャムを思わせる香りと渋みの少ない果実味と酸味の絶妙なバランスが特徴です。
月プレミアム(エーデルワイン)
女性審査員のみで行われるワインの審査会「サクラアワード2021」で、ダブルゴールドを受賞したワインです。岩手県産キャンベルを使用し、より濃い味わいに特別醸造。フルーティーでコクのある凝縮された味わいで、赤ワインの渋みが苦手な人でも飲みやすいと評判の甘口ワインです。
五月長根(さつきながね)リースリング・リオン2020(エーデルワイン)
7月1日に発売されたばかりの白ワインです。リースリング・リオンの栽培に適した日本を代表する産地・岩手県花巻市大迫町で栽培されたリースリング・リオンを100%使用。青リンゴやグレープフルーツを感じさせる爽やかな香りで、ほどよい酸味と果実味とのバランスが、和食に合うと評判です。
アルガーノ クラン(勝沼醸造)
契約農家で栽培された質の高い専用品種(マスカット・ベーリーA、カベルネ・ソーヴィニヨン)それぞれを、品種ごとに醸造しバランスよく繊細にブレンディングしています。やわらかい酸とまるみのある渋みの絶妙なバランスが特徴の赤ワインです。
アルガブランカ クラレーザ(勝沼醸造)
日本固有の品種「甲州」から造られた、日本が世界に誇るプレミアムワインです。ひと手間かけた醸造法の「シュール・リー醸造」により、ワインとの相性が難しいとされていた味噌、醤油、わさびなどにもよく合うため、特に和食に合うと評判の辛口白ワインです。爽やかな香りと透明感のある瑞々しい味わいが楽しめます。
まとめ
日本のワイン造りは世界に比べて歴史は浅く、「日本ワイン」と正式に表示ルールが定められてからまだ3年ですが、ぶどう生産農家やワイナリーの研究や努力により、「日本ワイン」はどんどん美味しくなり、世界からも注目されています。また、産地や品種、ワイナリー、ヴィンテージ(醸造年)の組み合わせにより、ワインの種類も多種多様です。
酒販店や通販サイトで「日本ワイン」銘柄を探したり、旅先でご当地ワインを探したりしながら飲み比べて、お気に入りの「日本ワイン」を見つけてはいかがでしょうか。
(取材・文 滝野利喜雄)
<取材協力・写真提供先>
- 十勝ワイン/池田町ブドウ・ブドウ研究所
https://www.tokachi-wine.com/
- サンマモルワイナリー
http://www.sunmamoru.com/
- エーデルワイン
https://edelwein.co.jp/
- 日本ワイナリーアワード®協議会
https://www.japan-winery-award.jp/
<参照出典>
国税庁HP「国内製造ワインの概況(平成30年度調査)」