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霊峰白山のふもとで伝統を受け継ぎ、加賀獅子舞の獅子頭を作り続ける

霊峰白山のふもとで伝統を受け継ぎ、加賀獅子舞の獅子頭を作り続ける

獅子舞は、インドを起源として中国を経て日本に伝わったとされる伝統的な民俗芸能です。その姿形や舞、演者の数、目的は地方によって違いますが、多くは正月に家々を回って厄払いをしたり、お祝い事や祭りの場で舞ったりする縁起物です。獅子舞の獅子頭は、人の頭を噛んで邪気や厄を食べてくれると伝えられており、演舞の中でもそういうシーンが登場します。昭和40年代頃までは日本各地の都会でも獅子舞を見かけましたが、今ではそういった機会はほとんどありません。

しかし、石川県では今も獅子頭を町ごとに大切に保存し、祭礼の際に舞を演じています。獅子頭を作れる職人がめっきり少なくなる中で、石川県白山市で三代にわたって獅子頭を作り続けている職人たちがいます。

それぞれに表情が違う獅子頭

北陸鉄道石川線・鶴来(つるぎ)駅からタクシーで5分ほどの場所に加賀獅子頭を作る知田工房(ちだこうぼう)がありました。

 

工房の中に並んでいるたくさんの獅子頭は、漆塗りの赤獅子や黒獅子だけでなく、鹿や熊の皮をはった白獅子もあり、一つひとつ大きさ、形、表情、色が違っています。

「加賀獅子頭はすべて顔形が違います。角(つの)があり、八方睨みの目でどこから見ても目が合う(睨まれている)のが特徴です」と二代目の知田清雲(ちだせいうん)さん。確かに黒目が大きく、左右に開いたものもあり、それぞれ豊かな表情です。

ここに並んでいるのは修理を待つ獅子頭でした。主に石川県内のものですが、遠くは宮城、山形、東京から依頼されたものもあります。全国的に獅子頭の修繕をできる職人が少ないので、自然に知田さんのもとに集まってくるそうです。それぞれ長年大切に守られてきた獅子頭で、中には100年以上前に作られて幾度も修理を重ねているものもあります。 

まちごとに獅子頭の顔が違うのと同じく、獅子の口から放たれる音も違います。叩いて音を出すものや、すり合わせて音を鳴らすものがあり、力強く扱うのですぐに壊れて修繕が必要になるのです。修繕のために獅子頭を工房に持ってきた人は、他の獅子頭を見るわけですが、誰もが「自分のまちの獅子頭が一番だ」と自慢するそうです。獅子頭は、金沢市には200以上、白山市にも100くらいはありますが、まちの守り神なので、とても大切にされ、祭礼と修理以外はめったに外に出すことはありません。

職人が少なくなっても技術を残す覚悟

「加賀は、殿様が伝統文化を大事にされたので他の地域よりも職人がたくさん育ちました。獅子頭づくりの工程は数多くあり、それぞれ職人の技術が必要です。私どものような木彫職人、金箔、皮ばり、角は真鍮、鍛冶、漆、飾り職人、馬の尻尾で作る獅子の毛を編むかもじ屋など、いろんな職人がいて成り立っています。
しかし、職人の引退などによって、その工程を担当する人がまるごといなくなってしまうこともあり、そうなると自分でやらざるを得ないのです。皮の職人がいなくなったので自分でやるしかなくて、でも難しいんです。鹿の皮が一番伸びるのですが、シワを付けずにはるのに苦心しました」と清雲さん。

知田工房では桐の一本木を彫って形を作るため、大きな獅子頭を作るときは太い木が必要になります。「昔はこの辺りにタンス屋や下駄屋など、桐を使ってモノづくりをするいろんな職人がいました。桐がたくさん必要だから、山に桐を植えて育て、林業も盛んでした。でも、今はタンス屋1軒とうちだけになってしまいました」と清雲さんは残念そうです。

工具は自分で修理して大事に使います

桐の寿命は80年くらい。20年くらいでタンスが作れる大きさに成長するので、女の子が生まれると嫁入り用にと桐を植える習慣がありました。桐はやわらかくて軽いという利点がありますが、決して彫りやすい木ではないそうです。多くの木材は長期間保管して乾燥させてから使いますが、桐は乾燥すると彫れなくなるため、作る獅子頭の大きさが決まったら、その都度、適した桐の木を探すことになります。かつてのように大木が少ない今、大きな獅子頭を作るのは、材料探しから大変なのです。

武芸精進の象徴でもある加賀獅子舞

加賀獅子頭は刀をくわえています

加賀獅子舞は、とても勇壮な戦いの舞です。1583(天正11)年、初代加賀藩主前田利家公が金沢城に入城した際に演じられたお祝いの獅子舞が由来とされています。歴代の藩主は、戦に備えて民衆に武芸を教えるのですが、それを幕府に隠すために金沢ではなく鶴来のまちで獅子舞が栄えたそうです。鶴来の獅子舞が「棒振り」と呼ばれるのは武術の意味があるからで、演舞では人間が獅子舞の相手として登場し、手には槍や長刀を持って戦うシーンが描かれます。「加賀地域は今でも道場が多く、幕末の頃は海側の守りという理由で自警団もできていたようです」と清雲さん。 

若き三代目の手で新しい獅子頭が生まれる

大芽さんにとオーダーされた獅子頭

三代目となる大芽(たいが)さんは芸大で彫刻を学んだあと、仏師の元で3年間修業をし、鶴来に帰って丸2年が経ちました。「他人の飯を食わないと力はつきません。私も初代である父から他の先生のところに行けと言われました」と父の清雲さん。

絵付けを担当するのは二代目の奥様

「大人になったら、祖父や父と同じこの仕事をするんだろうな、と自然に思っていました」と言う大芽さんは、34歳の頃から祖父の横で彫刻刀で木に穴をあけて遊んでいたそうです。仏像と獅子頭では使う木、彫り方ともにまったく違いますが、両方の技術を掛け合わせ、若いセンスで作品を作り続けています。

「友達のおばあさんが注文してくれた獅子頭を今作っています。ここに来てもらって相談したのですが、飾る場所や目的によって形や表情を決めていくので、直接お客さんと接することは重要だと感じています」と大芽さん。

「丸太に下絵を描くのですが、彫っていくと下絵は消えてしまいます。自分の頭の中に形が見えないと彫れません。父が『丸太の中に獅子の顔が見えないと彫れない』と言っていたことが今はわかります。見えないと怖くて彫れないんです」
「だから息子も自分で経験を積むしかないんです」と清雲さんは大芽さんを温かく見守ります。

迫力ある置物からキュートなグッズまで様々な獅子頭

獅子頭は災難をくい止めるといわれ、魔除け・厄除けとして床の間や玄関などに飾られたり、縁起物としてお正月やお祝いごと(新築・結婚・出産・節句など)の際に飾られています。なんといっても迫力があり、どこかユーモラスでもあり、見ていて飽きません。知田工房では家庭用の獅子頭や獅子頭を模した小物なども作っています。

焼肉屋さんから注文された牛獅子は、角が牛の形で鼻輪がある、一風変わったオリジナルデザインです。

小さな獅子頭でも、厄を食べる魔除けの存在なので、口が開くのが知田工房の特徴です。

知田工房では、イヤリング、箸置き、根付やかんざしなどの小物も販売しています。小さな獅子頭は可愛らしさも持ち合わせており、身に付けると粋な雰囲気に。

出産や家内安全、受験など家族の願いを込めて自宅に飾るほか、初節句、新築、開店などのお祝いごとの贈答品としてもおすすめです。

縁結びのご利益をいただきに白山比咩神社へ

鶴来のまちには2000年以上前から人々の信仰を集める「白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)」があります。霊峰白山を御神体とするこの神社は、全国白山神社の総本宮です。御祭神は、白山比咩大神(しらやまひめのおおかみ)=菊理媛尊(くくりひめのみこと)、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)の三柱。縁結びの神様としても知られており、近年では若い参拝者を多く見かけます。

鶴来町は、白山比咩神社の門前町であり、古くからの造り酒屋や醤油屋、麹店などが軒を連ねる「醸造の町」としても知られています。レトロな駅からスタートして、昔ながらの街並みを散策するのも楽しいですよ。

取材・文・写真: 松田 きこ

■知田工房
住所:石川県白山市八幡町98
Tel 076-272-1696
https://www.chidakoubou.com/

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