由布岳の麓に佇む、風雅な茶房と食事処で
ゆったりと流れる“由布院時間”を五感で味わう

由布院と言えば、温泉、由布岳、金鱗湖。
中でも金鱗湖は、朝霧が生み出す幻想的な風景で有名な観光スポットです。温泉と清水が湧き出る珍しい湖で、秋から冬にかけて、早朝に湖面から霧が立ち込める風景がとりわけ美しく、訪れた人を魅了します。
そのほど近く、「亀の井別荘」の敷地内に、癒しの空間「茶房 天井棧敷」と、由布院の旬の恵みを存分にいただける「山家料理 湯の岳庵」があります。
湖畔の自然豊かなロケーションと風情ある店構え、上質で心温まるおもてなしに、ゆったりと流れる“由布院時間”を感じることができるでしょう。
日本の原風景が残る由布院ならではの魅力
「由布院は、穏やかな時間をお過ごしいただける場所です」
そう話すのは、100年の歴史を持つ老舗旅館「亀の井別荘」の総支配人 糸谷さん。
「今でこそ多くの方に訪れていただく由布院ですが、山々に囲まれた小さな町です。いたる所に温泉が湧き、自然の恵みと豊かな景観にあふれています。安心してご滞在いただける環境を、“小さくあり続けること”で守ってきました」
だからこそ、由布院は日本の原風景を残す、憧れの温泉地として人気を誇っています。独自性を大切に守ったことで、由布院ならではのゆったりした時間が感じられるのです。
「茶房 天井棧敷」と「山家料理 湯の岳庵」は、いずれもその“由布院時間”を感じられる場所。「亀の井別荘」の宿泊客でなくとも立ち寄ることができます。
江戸時代の造り酒屋を移築した「茶房 天井棧敷」
立派な梁とゆとりある空間、静かに流れるグレゴリオ聖歌が印象的な「茶房 天井棧敷」は、入った瞬間から身を委ねたくなるような空気に包まれています。
建物は江戸時代の造り酒屋を移築してきたもの。屋根裏の大きな空間を生かしたいと考え、今の天井棧敷ができあがりました。
「どこに座ろうか」と席を選ぶのも楽しいひととき。一際目を引く大きな丸テーブルは、酒樽の底板を再利用したものです。この場所では若者たちが、ここ由布院の観光地としてのあり方や未来について語り合っていたのかもしれない。そう思うと、当時の空気や時代の流れまでも感じられます。
階段を上った2階席は、さらに隠れ家的な雰囲気。落ち着く空間でありながら、どこかワクワクした気持ちになります。
2階席のオーダーは、階下から「上階のお客様、コーヒーが入りました」と声がかかり、木製の手動リフトで届く仕組みになっています。昔ながらの仕掛けを今も利用して、お客様に楽しんでいただいているのです。
どこに座っても満足。四季を間近に感じながらくつろいで
横並び席、窓際の席、大きな円卓、2階席。テーブルもチェアもそれぞれ違って、座る場所によって見える風景も全く変わってくるのが「茶房 天井棧敷」の魅力の一つです。
店長の阿南さんにおすすめの席をたずねると、「庭の風景を楽しんでいただける窓側のテーブル席ですね。11月の紅葉や3月の桜は絶景ですよ」と教えてくれました。構造上、地上2階・3階部分にあたるので庭の木々を見下ろす形になり、より近く四季を感じられるのだそうです。
新緑の季節は、テラス席がベストポジションです。新鮮な緑のパワーを身体中で感じることができます。
春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色……季節ごとに好きな席を選んで、空間も含めて味わってみてください。
『モン・ユフ』をはじめ、おいしさと空間を楽しむためのメニューが勢揃い
「茶房 天井棧敷」と言えば、『モン・ユフ』。
約40年の歴史があるデザートで、『茶房 天井棧敷』を代表する一品として、お客様の大半がオーダーする看板商品です。
クリームチーズをホイップクリームで包み、ブランデー漬けのレーズンを添えて、粉砂糖がまぶしてあります。雪が降り積もった冬の由布岳をイメージした、甘さ控えめな大人のデザートです。
『モン・ユフ』と同じく、長い歴史のある『茶房 天井棧敷ブレンド珈琲』。実は、「茶房 天井棧敷」は、由布院で初めてコーヒーを出した店だそうです。深煎りで苦みがあるヨーロッパ風の味わいが、『モン・ユフ』にもよく合います。
ランチをいただくなら、錦雲豚(きんうんとん)を使った肉厚でジューシーな『カツサンド』をご賞味あれ。世界中を回っている旅慣れたお客様も「これまで食べたカツサンドの中で一番おいしい」と太鼓判を押してくれたのだとか。テイクアウトもできるので、移動中の食事や手土産としても大満足いただけることでしょう。
9時から11時までの限定メニュー『天井棧敷モーニング・セット』を目当てに来られるお客様も少なくありません。女性を中心に人気がありますが、朝からしっかり食べたい方、毎週楽しみに来られる地元の方など、コアなファンも多いそうです。
表面がサクッと焼けた厚切りのトーストに、地元の野菜を中心としたサラダや鴨のスモーク、黒胡椒がきいている「温泉たまごのジュレ」など、新鮮かつ一手間あるおいしさは一日の始まりを幸せにしてくれます。なくなり次第終了なので、早起き必須ですよ。
夜の庭も美しい「Bar 山猫」で、大人の空間に早変わり
17時以降は、店内の照明を落としてグッと大人の雰囲気に。「茶房 天井棧敷」が「Bar 山猫」へと変わり、昼間と違う表情を見せてくれます。
高めのカウンター席でバーテンダーとの会話を楽しむのも良し。窓際の席で少し低めの椅子に腰を沈め、ライトアップされた景色を肴にお酒を味わうのも良し。温泉に浸かったあと、夕食前にバーを楽しむスタイルも良し。型にとらわれることなく、大人のための時間を満喫したくなる空間です。
お客様が“無に返る空間”としてあり続けるだけ
「いつ来ても落ち着ける。歳を重ねても変わらずにホッとできる。お客様の心に残り続けられる喫茶として在り続けたいですね」とは、阿南店長。「まわりが変わっても、ここだけは変わらない」と、若い頃から変わらず通ってくださるご年配のお客様が多いのも納得です。
最近のお客様も、観光地の賑わいではなく、ゆったりとした時間を楽しみたい方が多く、「時間を過ごすうちに心が洗われた」との声をいただくこともあるそうです。
「ここでしか味わえない時間を感じていただきたい。ただし、どう過ごすかはお客様次第。私たちは、どなたであってもそう感じてもらえるよう準備をするだけなんです」
そう言い切れるのは、喫茶とは、本来“目的が無い空間”という考え方から。お客様が“無に返られる空間”としてあり続けることを大切にし、その思いがお客様に伝わっているのが感じられます。
由布院の恵みを舌と目で堪能できる「山家料理 湯の岳庵」
山の幸を中心とした由布院の旬をいただきたいなら、ぜひ「山家料理 湯の岳庵」へ。金鱗湖から伸びる小道の先、木立の中の大きな茅葺屋根が目印です。
ゆったりと穏やかな時が流れる美空間で、食事をしながら四季折々の美しい風景を眺めることができます。
古民家を改装した趣ある店内には、小上がりの個室、庭に面したテーブル席、座敷席などがあります。
「特に4〜5月の新緑が眩しい時期と11月の紅葉シーズンがおすすめですよ」と話すのは、「山家料理 湯の岳庵」支配人の池田さん。絵画のような風景に、思わず息を呑むことでしょう。
「山家料理 湯の岳庵」が謳っている“食談”とは、雰囲気や窓から眺める自然の中で語らいながら楽しむ食事を指します。美しい風景はもとより、配されている古き良き家具たちも、時代を経て大切に使い続けているものばかり。上質なものに囲まれると、自然と上質な空間になるのがわかります。
新鮮な食材を活かした滋味深い料理の数々
由布院の食材を使った、滋味あふれる旬の料理がおいしいと評判の「山家料理 湯の岳庵」。野菜、おおいた和牛、ヤマメ、マス、鯉、うなぎ……顔が見える生産者から仕入れた季節の食材を使った料理は、小鉢やスープ、メインからご飯、デザート、ドリンクにいたるまで、深い味わいが感じられます。
「50年近くお出ししているスッポン料理や鯉の洗い、のれん料理である山菜鍋、牛鍋がおすすめですね」と池田支配人。「先代から受け継いだ変わらぬ味と、今の時代に合った味付けを心がけています」との言葉に、日々研究を重ね、一品一品丁寧な仕事をされているのが伝わってきます。
ランチにディナーに、どんなシーンでも満足できる“由布院料理”
一番人気の『季節の彩り膳』(2,100円)は、地元の新鮮な食材を使い、一膳で旬を味わえる贅沢なメニューです。素材を生かしたやさしい味わいが、癒しの風景とも相まって、舌に心にじんわりと染み渡ります。
その名の通り、少し軽めの『はら七分』(2,300円)は、少しずついろいろ食べられてヘルシーと女性に人気。もとはといえば、旅館の朝食を召し上がったお客様に向け、少しボリュームをおさえて考案されたものです。
厚切りのビフテキが丼を覆い尽くす、ボリューム満点の『炭火焼ビフテキ丼』(2,500円)。なんと一杯で100グラムものおおいた和牛を使用しているのだそうです。肉の香りと旨みを引き立てるために厳選された炭で炙り、醤油ベースの秘伝のタレをかけたビフテキは、口の中でとろける肉の柔らかさと濃厚な味わいに箸が止まりません。
おおいた和牛のサーロインをたっぷり使った『ステーキ膳』(3,300円)も絶品です。
その他にも国産うなぎを使ったお料理や湯の岳庵名物のひとつである「スッポン鍋」など、素材にこだわったメニューがそろっています。
ご要望があれば、予算に応じてメニューを組むこともでき、特にハイシーズンは、昼夜ともに予約がおすすめです。
半世紀にわたって愛される理由は、由布院の“本物”を変わらず味わえること
「由布院と言えば」という代表的な料理を一つに絞り切るのが難しいのは、裏を返せばすべての料理があるということ。「山家料理 湯の岳庵」には、由布院の食のすべてがあると言っても良いかもしれません。四季折々の旬の食材を、あらゆる調理法で一番おいしく提供してくれます。
庭や広いロビーを利用して、幅広い世代のお客様が楽しめるイベントも行っています。例えば1~2月なら、お客様と一緒に杵と臼で餅をつき、つき立ての餅を振る舞うと、とても喜ばれるそうです。
「癒しの存在であり、『山家料理 湯の岳庵』を選んだことで笑顔になれるような存在でありたい」と話す池田支配人の言葉から、本物の料理を提供し続ける一方で、料理やロケーションだけでなく、体験とともに思い出を持ち帰ってもらいたいという思いが垣間見えました。
いつでも“由布院時間”を楽しめる普遍的な場所でありたい
「いつ来ても安心しておくつろぎいただける場所でありたい」
両店ともに、決して「敷居高く」という意味ではなく、いつでも品と質を備えつつ「どなたでもお越しください」とお客様をお迎えする心づもりだと言います。
「その思いを伝えるのではなく、そうあり続けること。お客様にそう感じていただくことができれば、自然と居心地の良い場所になり、またいつか帰って来ていただけると信じています」
そんな言葉に、大きな愛情が感じられます。
あなたも「由布院の原風景」のような空間に身を委ね、ゆったりじっくり“由布院時間”を過ごしてみませんか。
【亀の井別荘】
〒879-5102 大分県由布市湯布院町川上2633-1
【茶房 天井棧敷】
営業時間:9:00〜17:00
定休日:不定休(月1回程度)
【BAR 山猫】
営業時間:17:00〜24:00
定休日:火曜日
URL:https://www.kamenoi-bessou.jp/databox/data.php/facility_cafe_bar_ja/code
【山家料理 湯の岳庵】
TEL:0977-84-2970
営業時間:11:00〜21:00(L.O.)
定休日:不定休(月1回程度)
URL:https://www.kamenoi-bessou.jp/databox/data.php/facility_yunotakean_ja/code