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【富山県南砺市】美食家をも魅了する、秘境の地の前衛的地方料理 レストラン「レヴォ」

【富山県南砺市】美食家をも魅了する、秘境の地の前衛的地方料理 レストラン「レヴォ」

2020年12月、富山県南砺市(なんとし)の利賀村(とがむら)にオープンしたレストラン「Cuisine régionale L’évo」。究極の地産地消を追求するため山奥の限界集落に誕生した、世界に照準を合わせたディスティネーションレストランである。冬には3メートルの雪が積もる秘境にありながら、予約をとるために、今、半年は待たなくてはならない。日本中の美食家を魅了するオーナーシェフ谷口英司氏が創り出す前衛的地方料理を求めて富山に向かった。

“前衛的地方料理”のレストランとは

富山駅からJR高山本線で20分ほどの越中八尾駅で降りると迎えの車が待っていた。カーブの続く山路を走ること1時間半、豪雪地帯に降り積もった雪は、スタッフによりレストランまで完璧に除雪されていた。やがて、雪に埋もれた森の奥に、この地域特有の屋根「雪割」が現れた。かつての集落の石垣を活かした敷地に点在するのは、レストラン棟とコテージ3棟、パン小屋、サウナ棟の計6棟で、周囲は深い森と険しい山道が続く。

オープン3年目を迎えるこの冬、「四季が巡って食材の幅が広がってきた」と満面の笑みを湛える谷口シェフ。星、 空、 雪、 山、 水、 土。すべてが食につながる。そんなロマンチックな心組のもと、この地でしか生み出せない料理を模索することにチーム一丸となって心血を注ぐ。

紆余曲折の末、たどり着いた新天地

谷口シェフが料理人をめざしたのは、大阪でトンカツ屋を営んでいた父の背中を見て育ったからだ。高校卒業後、兵庫県宝塚市の旅館で修業をスタート。和食の料理人を目指し、一年ほど経ったある日、朝食の支度をしていた時に、「爆弾が投げ込まれたかと思った」というほどの衝撃で体が宙に浮いた。阪神大震災が襲ったのだ。旅館は崩壊。職を失い、途方に暮れた。

あらたな出発ができたのは大阪梅田の洋食屋。その頃の憧れは、まだ口にしたこともなかったフランス料理だった。ホテルのフランス料理店の宣伝チラシを集めては、技術を学ぶ日を夢見て盛り付けの勉強をしていた。
その後、紆余曲折を経て念願のフランス料理店に就職。神戸のホテルで、ゼロからフランス料理を学んだ。フランスの巨匠ベルナール・ロワゾーシェフ系列のレストランである。ロワゾー氏は、バターやクリーム、オイルなどを使わず、肉などの焼き汁を水で溶き伸ばしてソースを作り、自ら「キュイジーヌ・ア・ロー(水の料理)」と呼び、フランス料理界に新時代をもたらした。「かなり影響を受けています」と谷口シェフが尊敬してやまない師匠である。

やがて、谷口シェフはフランスのロワゾー氏の店に研修に行く機会を得て、意気揚々とフランスに向かった。そこに飛び込んできたニュースは、世界中を驚かせたロワゾー氏の自殺。失意のうちに帰国し、数々のレストランの立ち上げにかかわってきた。そのうち富山のレストランの立ち上げを打診される。何度も断り続けた末、レヴォの前身、「西洋膳所 サヴール」のシェフとして富山の職を受け入れたのは、地元のアーティストや生産者とともに創り上げる料理に意義を見出したからだった。

チームレヴォが発信する富山の魅力

雪を踏みしめながらL’évoの扉を開けると、スケール感あふれる迫力の空間がひろがる。レセプションは、あたかも富山のアーティストたちの作品を集めた美術館。続くダイニングに足を踏み入れた途端、一気に視界が開け、渓谷の豊かな自然をバックに広々としたオープンキッチンで料理をするシェフの姿が目に映った。

富山の美味が詰め込まれた10品のコースの中には、強烈に印象に残るシグニチャーディッシュがいくつかある。
その中のひとつ「L’evo鶏」は、富山市で有機複合型循環農業を営む農場、「土遊野(どゆうの)」と連携し、飼料から指定して育てた鶏。鶏の皮に鶏モモ肉とムネ肉、熊の脂、餅米を詰めて薪火で焼き上げる。「大門素麺(おおかどそうめん)」は、半生麺を使用し、黒部のヤギチーズ専門店「YCo.」のシェーブル(ヤギ)チーズにフキノトウという味の想像もつかない個性的なスープを組み合わせる。

「本当は、都会でガストロノミックなフランス料理店をやりたかったんです。当時は地方の料理といえば郷土料理。富山に来てすぐの頃は、『フランス料理を教えてやる』といった傲慢な気持ちでいたのですが、富山に教えてもらったことがたくさんある。そのおかげで料理が進化し続けています」と、谷口シェフ。

前衛料理と謳っていても、そこはかとなく素朴なニュアンスをまとっているのは、囲炉裏を囲んで食べるような料理でもあるからか。ひと皿に多種多彩な素材がこれでもかと詰め込まれ、どんな味がするのか、予想もつかない。一見雑多なのに咀嚼すると統一感が押し寄せ、シンプルに着地するというマジック。ひと皿に入れるエレメントは、「一切計算なしの直感のみ」であるという。これまで味わったことのない初めての旨味が連続する。

「黒文字」

「この土地の郷土料理には興味がつきません。たとえば、昔から作られていた山菜料理は実に理に適っている。そもそも発酵食がなぜ生まれたか、考えたこともありませんでした。新鮮なうちに食べたほうがおいしいのに、なぜわざわざ山菜を干すのか。冬になると、食料がなくなるから保存食を作っておかなければならないという、生活の知恵なんですね。地元のお母さんたちから、そうした発酵食や地元の料理を学んでコースに反映しています」

「日本鹿」

地元で山を熟知しているハンターにも助けられている。キッチンの地下には17度に温度設定された貯蔵庫があり、シカやイノシシ、クマなど猟師から届いたジビエを保管しているほか、10分ほど離れた場所には解体所も作った。富山のジビエは、クマ、イノシシ、カモやキジが中心で、シカ以外ならウサギや穴グマも獲れる。谷口シェフが注文を出すのは、「適度に脂ののった小さめのイノシシ」のみ。ほかに仕留められた動物は一頭丸ごと引き受ける。

「日々山に入り土地を熟知しているハンターでないと、毎日のように獲物を持ってきてはくれません。イノシシ、クマ、シカなど獲れたものはすべて買いとり、あますところなく料理に使い切ります」

桝田酒造店が造る富山を代表する美酒「満寿泉」、氷見の魚問屋が経営するセイズファームが耕作放棄地を開拓して造るワインなど、料理に合わせる酒類もすべて地元産。野菜や花を育てる農家、目利きの鮮魚店らとともに、チームレヴォとして富山の魅力を発信していく。

進化から深化へ向かうレヴォの料理

「毎朝買い出しに行きますが、山と海が近接しているので、海の幸、山の幸、里の幸を回っても1時間ぐらいでその日の食材がそろいます。水道がないから山の水を使ってみたら料理がまったく違ったものに。ガスがないから薪を使うと熾火(おきび)でジビエがおいしくなる。技術が上がれば料理もレベルアップすると思っていましたが、ここにきて、料理観が180度変わりました。まだ3年目、毎日発見があります。これからもどんどん料理が変わっていくんじゃないかな」

さらに、谷口シェフの料理に欠かせないのは、富山の陶芸家、ガラス作家、木工作家たちが作る器や家具などのアート作品。多くの料理人が、作家に自分の料理に合う器作りをリクエストするなか、谷口シェフは、料理から感じたものを器に表現してほしい、と作家の感性に任せる。

レストランという非日常空間を創造していくために、チームレヴォの力により、富山の魅力を結集する。そうすることで、この先、自分がいなくなっても、この地で「レヴォ」が長い歴史を刻んでほしいという谷口シェフ。
“Cuisine régionale”とは、「郷土料理」という意味。「レヴォ」とは、フランス語で進化を意味する“evolution”の意を持つ。店名を超えて「進化」する郷土料理は、いつか「深化」に変わるだろう。秘境で繰り広げられる唯一無二の饗宴であった。

取材・文:山下 美樹子

Cuisine régionale L’évo

住所:富山県南砺市利賀村大勘場田島100番地
Tel: 0763-68-2115
営業時間:ランチ 12:0012:30 ディナー 18:0019:00
休業日:水曜日
https://levo.toyama.jp/

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