【できる男の5つ星おしゃれ術 第1回】 男をあげる スーツの正しい着こなし方
1922(大正11)年創業、オーダーメイドスーツを扱う「ゑみや洋服店」三代目店主 江見真也さんに、正しいスーツの着こなし方を教わります。何気なく着ているスーツをより素敵に、自信をもってかっこよく着こなしましょう。
江見真也(えみ・しんや)
ゑみや洋服店 三代目店主
「正しく、楽しく、かっこよく」をモットーに、オーダーメイドスーツやシャツなどの洋服を販売する。「あなたのモテるを創るスタイリスト」として、ビジネスファッションの着こなし方を、インターネットラジオや自社HP、YouTubeにて、発信している。
スーツの着こなしで、最も大切なこと
洋服とは本来、会う相手に合わせて選ぶものです。特にビジネスの場では、相手が格上の人や初対面の人の場合、あるいは自分自身が人前で話す、などの立場も考慮し、まずは基本を押さえておくことが大切です。
とりあえず黒、は正解?
どんな場でもスーツは黒色を着ていれば正解、と思っている人も多いのではないでしょうか。冠婚葬祭において黒色は格上になりますが、ビジネスウェアでは格下。紺やチャコールグレーの無地に近いものがベストです。就職活動で黒のスーツを着ている人は多いですが、ビジネスの場では避けた方が無難でしょう。
ワイシャツは肌着?
スーツの下に着るワイシャツは白の長袖が基本です。ワイシャツは本来“肌着”ですので、ジャケットを着用せずワイシャツだけでビジネス相手に会うことは失礼になります。
ヨーロッパの人は日本人のようにワイシャツの下に肌着は着ません。ただし湿度の高い日本では、肌着を着ることに問題はありませんが、“着ていないように見える”努力をしてほしいと思います。首回りから肌着の丸首が見えている、ロゴや色がすけて見えるのは、あまりいい印象ではありませんね。
靴下はハイソックスを
靴下は、足首が見える短いカバーソックスはご法度。座った時にすねが見えると見苦しいので、黒や紺などのハイソックスを履いてください。靴とベルトは同じ素材、同じ色のものを選ぶと、全身を見たときにまとまった印象になります。
基本的な着こなしを知った上でアレンジを
基本的な着こなしを知ったうえで、時と場合によって着崩すのは、個性が出ておもしろいと思います。許される場では自分流のアレンジ、きちんとした場ではピシッと決めてくる、そういう人が一番かっこいいと思います。
相手を思う気持ちを持って、服を選ぶことこそ、正しい着こなしにつながるのです。
スーツは何のために着るのか
スーツの正しい着こなしを知る上で、成り立ちを知ると、その心がわかります。スーツのスタイルは、イギリスで生まれました。貴族が王様に会うために、燕尾服やモーニングなどを着たのが発祥です。その後、日常を過ごすなかで長い裾が邪魔になり、裾を切って今のようなスーツの形になってきました。つまり、スーツは本来、相手に対して敬意を表現するためのものだったのです。
僕の祖父世代、戦前はイギリス流の着こなしが主流でした。細身のスリーピースで月給の数カ月分くらいの値段、まさに“一張羅”だったわけです。戦後、アメリカのスタイルが入ってきて、カジュアルな恰好がかっこいいとされました。例えば、よく見かけるボタンダウンシャツにネクタイ、というスーツスタイル。これはイギリスの着こなしではありません。もともとボタンダウンシャツは、ポロというスポーツ用の服で、アメリカの某ブランドが、紺ブレにボタンダウン、細身のネクタイというカジュアルスタイルを学生用に流行らせたのが始まりです。アメリカに王様はいません、自己主張の国です。決して間違いではありませんが、イギリスのビジネスウェアの着こなしとは違うわけです。スーツは自己主張のものではないので、相手に敬意を表するという意味でも、ボタンダウンシャツは格上の人や初対面の人と会う場合には、避けたほうがよいスタイルです。
スーツのボタンは開けて着る? 閉めて着る?
スーツを着たとき、ボタンをすべて留めていたり、立つときも座るときも留めたままだったりしていませんか? 基本的に三つボタンの場合は、真ん中の1つだけか上2つのみを留めます。そして座るときにはさりげなく外し、立つときにまた留めます。すべて留めていたり、座るときも留めたままだと、ボタン部分にしわが寄り、布に負荷がかかって傷みやすくなります。また、腕周りが窮屈になるので、動きにくいですよね。
テレビのニュース番組を見ていても、留めたまま座っているキャスターは結構多いです。もしかすると、マナーとしては知っているが、日本人の性質として「だらしがない」と視聴者からのお叱りを回避するためのことかもしれませんが。
首相に関しても、5年くらい前の主要国サミットの様子などを見ていると、海外の首相たちはみな座るときには外していますが、日本人だけ留めたままです。最近の安倍首相は意識しているのか、座るときは外し、立つときに留めるようになりました。
みなさんも、ぜひこれを実行して、ワンランク上のダンディ(or“できる男”)を目指してください。
ゑみや洋服店の歴史
1922年、春日野道商店街で呉服商として創業。1946年水道筋商店街へ移転、紳士服(注文服)の専門店へ転業。1963年、オリジナル紳士服「コーベ・ルック」を販売。2007年、三代目江見真也に事業継承と共に「ゑみや洋服店」に名称を改め、オーダーメイドのセレクトショップとしてリニューアルオープン。日本中からおしゃれな男性がやってくる。
<ゑみや洋服店>
電話 0120-86-2917
住所 兵庫県神戸市灘区水道筋4-1-18
営業 10:00~19:00
定休 水曜定休
駐車場 有