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風情を求めて台湾中部の秘境温泉を行く

風情を求めて台湾中部の秘境温泉を行く

台湾旅行をする日本人の多くはその目的がグルメと観光。しかし、何度も台湾を旅し、もっと深く台湾を知りたいという人におすすめなのが秘境温泉だ。温泉好きの日本人の心を踊らせるアイテムが台湾各地の温泉郷にある。最近はアプローチしやすくなった台湾中部エリアの穴場温泉リゾート、その愉しみ方をお伝えしよう。

金沢の名旅館「加賀屋」も進出する台湾温泉リゾート最前線

台湾は島の中央に背骨のように南北に山脈が続いており、古くから多くの温泉が点在していた。しかし、いまのように温泉施設ができていく、その変遷はちょっと変わっている。日本統治時代に日本の警察組織が台湾の山の隅々まで入り込んで整備を進めたのだ。戦後、中華民国の時代にはやや寂れたものの、時を経て、裕福になった台湾人が日本へ観光に行って温泉の魅力を覚えた。そこから台湾でも温泉とリゾート開発が進み、車社会の広がりによって山深い温泉が脚光をあびるようになった。

北は硫黄泉ほか成分の違う温泉が散見される陽明山(ヤンミンシャン)温泉群、北投(ベイトウ)温泉や台湾原住民タイヤル族が居住する烏来(ウーライ)温泉、東海岸の宜蘭(イーラン)県に広がる礁渓(ジャオシー)温泉、南は泥温泉として有名な関子嶺(グァンズーリン)温泉など、全国各地に点在して

いて、渓流の脇に自然に湧く温泉などを含めれば100カ所以上にのぼる。

北投温泉は、白硫黄泉、青硫黄泉、鉄硫黄泉の3種の泉質の温泉が湧き、世界的にもめずらしいラジウムを含む「北投石(ほくとうせき)」の産地としても知られている。能登の名旅館「加賀屋」もこの温泉郷に進出するなど、注目を浴びている。

その中でも秘境気分たっぷりの「台中・谷関(グーグァン)」をはじめ台湾中部のいで湯をご案内しよう。

国際空港から新幹線で、山岳エリアも楽々アプローチ

中南部の温泉リゾートはこれまで日本の観光客へはそれほど紹介されていなかった。台湾のヘソに近い場所にあるので、交通の便が悪くハードルが高い、という印象があったからだろうか。しかし、ここ10

年の高速道路の整備により、台湾新幹線と併せて利用すれば、自家用車をもたない観光客でも効率よく目的地に到着できるようになった。

谷関温泉が目的地なら、桃園(タオエン)空港から電車で高鉄桃園駅まで行き、台湾新幹線で高鉄台中駅まで約40分。台中駅から谷関まで豊原客運のバスで2時間弱。空港からは3時間弱で到着できる。電車が面倒だという人は、空港からタクシーを利用すれば2時間半で1人片道1万円弱。朝イチで日本を出発すれば夕方前には到着できる計算だ。

豊かな自然環境が異郷の温泉気分を盛り上げる、谷関の老舗ホテル

日本統治時代は「明治温泉」と名付けられて発展した歴史もある谷関温泉郷。台湾中部横断道路沿いにあり、一時代を築いたが、台風で道路が寸断、10年来開通されなかったため、ややひなびた感があった。しかし、そこにかえって風情がある。

周囲の宿を数軒見て回った中で「明治温泉大飯店」などは外見が和風でよさげなのだが、かなり古びた感がある。吊橋を渡って、眺めのよさそうな宿はどこだろうかと見回すと、バルコニーがあって、泊まってみたいなと思わせたのが「谷関飯店」だった。ロビーへ入ると老舗らしく、なるほど場所がよい。そして見学を申し込むと快く中に入れてくれた。

温泉プール利用料金だけなら150元。ドクターフィッシュがいる池で足を浸すことができるが、ここは魚がいるため冷たい水だった。大浴場は男女一緒なので水着着用。半野外で広々しているので、のびのびと川岸の景観を眺めながら過ごせる。客室も予想通り景観抜群で気に入った。リバービューとマウンテンビューの2種あるので、予約の際にリバービューをリクエストしておけば間違いないだろう。外には食堂が数軒並んでいるので食事に困ることはなく、国道沿いなのでコンビニもあって申し分ない。

吊り橋がなければたどり着けない中洲にポツンと粋な温泉旅館

台湾の温泉は谷関のように山中の素晴らしい景観と、素朴な懐かしさを楽しむことができる。例えば苗栗(ミヤオリー)県にある泰安(タイアン)温泉。こちらも山中を30分ほど走った渓流沿いのいで湯だが、ここには吊り橋を渡ってやっとたどり着ける、中洲にたたずむ温泉旅館もある。

その名も「湯之島虎山(フーシャン)温泉会館」。温泉宿の隆盛の中で、森林リゾート風に改装され、プライベート気分たっぷり。肌にまとわりつく湯質はナトリウム炭酸水素・塩化物泉でツルツルスベスベ浴感を楽しむことができ、しっかりとした知覚的個性のあるお湯だ。宿は不便な場所にあるため、夕食と朝食もセッティングされている。

そして、泰安温泉郷をさらに奥に入った突き当りにある「警光山荘(チングァンサンヅァン)」という日帰り温泉施設は、110年前に日本人が療養所として整備していまに至る。ここの湯は地元の人たちも立ち寄る穴場的な公共浴場なのだ。  

肌がしっとり、日本人好みのいで湯、盧山(ルーシャン)温泉郷

さらに、台中の南側の山中に入った盧山温泉郷をご紹介しよう。ここは台湾でもっとも高い場所にある温泉地で、山あいの渓流沿いにある。景色がよく情緒もあって、日本統治時代から人気の高い温泉だったそうだ。

ところがいまは、ずいぶん人が少ない。実はここは数年前の暴風雨災害で渓流の増水により多くの温泉施設が被害を受けた。そればかりか、違法建築が発覚し、政府の観光局からブラックリストのレッテルを貼られてしまった”ワケあり”温泉である。乱開発の見返りとも言えるが、実際に立ち寄ってみると、吊り橋を中心にしっとりとした温泉風情にあふれた街並みが残っている。

町の人たちも親切で好印象だ。しかし、「風評被害の打撃は大きい」と困った様子だった。それでも私が受けた印象は、ローカル客が敬遠する分、より落ち着いた情緒があって、静かな温泉町を期待する日本人にとっては好都合。「蜜月館(ハネムーンホテル)」をはじめ小さな宿を含めたら、30軒ほど宿泊施設が遊歩道沿いに点々と続く。台湾山中を散策するには最適な温泉地だと感じた。

交通網の発達で、台北や高雄から日帰りで行けるようになった山間の温泉。実はまだまだ浸透していないが、台湾は様々な泉質の温泉地が存在する『温泉大国』である。気に入ったら一泊、いや連泊をして、良い泉質の湯とそのまちの風情を堪能してみてはいかがだろうか。

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