華麗なるオペラの殿堂! ミラノ・スカラ座の魅力
オペラと言えば、イタリアが本場ですね。そして、イタリア・オペラと言えば「ミラノ・スカラ座」でしょう。5つ星読者の方には、実際に観劇した経験がある方もおありなのではないでしょうか?
1778年に開館して実に240年余り、「オペラの殿堂」として世界へ発信し続けている、この劇場の魅力をたっぷりとご紹介していきましょう。
スカラ座とは?
1、ミラノ・スカラ座の歴史
ミラノ・スカラ座の正式名称は「スカラ座(Teatro alla Scala)」。単純にミラノにある「スカラ座」と言うことで、通称「ミラノ・スカラ座」と呼ばれています。文献によっては「ミラノのスカラ座」と称しているものもあるでしょう。
今現在のスカラ座が誕生したのは先にご紹介した通り、1778年3月。
実はその2年前の1766年、既に顕在していた歴史的建造物「ドゥカーレ劇場(Teatro Ducale)」が謝肉祭のコンサート中に焼失し、その劇場のバルコニー席を所有していたミラノの貴族たちが、当時の統治国オーストリアの大公フェルディナンドに新劇場の依頼を歎願します。そういう意味では、スカラ座は二代目となります。
新しい劇場は、当時のオーストリア帝国女帝マリア・テレジアの依頼を受け、建築家ピエルマリーニが引き受けました。
劇場の建築場所に選ばれたのが、以前サンタ・マリア・アッラ・スカラ教会があった場所だったため、新劇場は「公国立スカラ新劇場(Nuovo Regio Ducal Teatro alla Scala)」と名付けられました。
余談ですが、こけら落としは、アントニオ・サリエリ作の『見出されたエウローパ』でした。
映画「アマデウス」をご覧になった方にはピンとくる名前かもしれません。あのモーツアルトに嫉妬し、彼を貶めようと苦悩した作曲家サリエリです。女帝マリア・テレジアによって建設された劇場のこけら落としを任されたのですから、才能ある作曲家でもあったのですね。
2、舞台を飾ったアーティストたち
200年以上の長い歴史がある劇場であり、オペラに限らず、バレエ、演劇、オーケストラのコンサートなど、様々なパフォーマンスとそれに関わった才能あるアーティスト、作曲家が数多く輩出されました。
ここでは、特に近代の代表的なアーティスト達をご紹介します。
●アルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini, 1867年3月25日 – 1957年1月16日)
20世紀を代表する指揮者で、スカラ座やメトロポリタン等の音楽監督を歴任。
カタラーニ作曲『ワリー(英語版、イタリア語版)』やプッチーニ作曲『トゥーランドット』など、重要な近代イタリア・オペラを初演しています。
作曲家であるプッチーニの死によって、4幕フィナーレが未完に終わったオペラ「トゥーランドット」。
作品自体は、プッチーニの弟子アルファーノが、補作する形で完成させました。
しかし初演の際、トスカニーニはフィナーレの直前で演奏を止め、「巨匠は、ここで筆を絶ちました」と言って指揮台を降り、そこで公演が終了したのは有名なお話です。
●ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan 1908年4月5日 – 1989年7月16日)
クラシックにあまり馴染みのない方でも、「カラヤン」と言う名前は聴いたことがあるかもしれません。彼の指揮をした「アダージョ」と言う曲がCMに使われたことがありました。
1939年にベルリン国立歌劇場およびベルリン国立管弦楽団の指揮者の地位を得るとともに、イタリアのミラノ・スカラ座でオペラを指揮することとなりました。
非常に美的センスがあり、スポーツカーや自家用ジェット機を乗り回すなど、端正な趣と合わせて人気を博しましたが、1964年12月17日に、当時人気絶頂のマリア・カラスの十八番「椿姫」を、カラヤンとミレッラ・フレーニのコンビでの上演したところ、完全に失敗。以後30年近く、スカラ座での『椿姫』の上演が封印されることとなった逸話を残しています。
●フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli, 1923年2月12日 – 2019年6月15日)
5星マガジン読者の方なら、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
映画「ロミオとジュリエット」でお馴染みの映画監督フランコ・ゼヒレッリもオペラ演出家としてスカラ座に作品を残しています。
とくに自国イタリアの作曲家、ヴェルディやプッチーニなどの作品を多く演出しており、彼の「アイーダ」は日本でも新国立劇場で上演されています。
●マリア・カラス(Maria Callas, 1923年12月2日 – 1977年9月16日)
20世紀最高峰のソプラノ歌手です。スカラ座に限らず、全世界のオペラ劇場を席巻した彼女ですが、やはりミラノ・スカラ座でのオペラ公演には並々ならぬ思い入れがあったようです。
スカラ座にとっても、マリア・カラスと言う歌い手なくしてはオペラ公演はあり得ないという時代もあり、事実、マリア・カラスの『椿姫』はスカラ座の歴史上において最大の成功作のひとつであり、記録的な収益をもたらした舞台となっています。
●ルチアーノ・パヴァロッティ(Luciano Pavarotti、1935年10月12日 – 2007年9月6日)
プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスとともに三大テノールとしておなじみのパヴァロッティも、スカラ座には欠くことのできない存在です。
プッチーニ作曲「ボエーム」のロドルフォ役で1964年にはミラノ・スカラ座にデビュー。
彼の乳兄妹であるソプラノ歌手ミレッラ・フレーニとの名コンビで名を博しました。
大きな身体と愛嬌のある笑顔が魅力的で、驚異のHiC(三点ド音)を軽々と出して喝采を浴びました。
3、なぜ「オペラの殿堂」なのか?
世界の劇場がそうであるように、スカラ座にも専属のオーケストラ、合唱団、バレエ団があります。そして、それぞれがコンサートや公演をやり、それらすべてのプログラムを揃えて、ワンシーズンの演目とスケジュールが決まります。
「パリ・オペラ座」のように、「オペラ」と言う名前がついているわけではないのに、何故スカラ座は「オペラの殿堂」と言われるのでしょうか。
実は、スカラ座では有名なオペラ作曲家の初演が数多く上演されています。プッチーニやマイアベーヤ、とりわけヴェルディとは密接な関係を結んでいました。ドイツ統治下に開館された関係で、ワーグナーの作品も上演されており、劇場とオペラ作曲家の繋がりが密故に「オペラの殿堂」の敬称がついたのでしょう。
実際、ローマ歌劇場やナポリ・サンカルロ劇場、フェニーチェ劇場など、数あるイタリアのオペラ劇場を置いても、「オペラの殿堂」と呼ばれるのは、ミラノ・スカラ座のみなのです。
ミラノ・スカラ座のビジネス
さて、具体的にスカラ座ではどんなビジネスが展開されているのでしょうか。劇場内部や、どうやって運営されているのか、ご紹介していきましょう。
1、劇場の中をご紹介しましょう。
写真をご覧になると判りますが、とにかく客席数が多いですね。スカラ座はバルコニー席まで合わせて2016席あります。ヨーロッパに多い、馬蹄形と言う、馬の蹄のように、ステージを囲む形で客席が縦に組まれています。
一番下の座席がステージに近い、平土間の座席をプラテーア(PLATEA)、そして、ステージを囲むようになっている部分を、4段目までパルコ(Palco)と言い、このパルコに個室やボックス席があります。貴族や王族が座る場所ですね。
5段目、6段目ガッレーリア(Galleria)と言う座席になり、柱などであまりステージが観れない代わりに安い席となります。
オペラ観劇の場合は、着飾って来場するのも楽しみですね。スカラ座のシーズンは、伝統的に12月7日の聖アンブロジウスの日(ミラノの守護聖人)から始まりますので、やはりコートが必須。日本のようにロビーでコートを預かるのではなく、それぞれの席のクロークに案内されます。
プラテアやガッレーリアでは右側か左側で2か所のクロークに分かれます。ボックス席には当然のようですが、専用のクロークがあるようです。
さて、オペラを観劇する際に出来れば欲しいのが「字幕」です。
スカラ座では、一席に一つ、字幕の小さなモニターが付いています。イタリア語か英語か選べますので、歌詞が知りたい方はイタリア語、内容をなんとなくでも理解したいのであれば、英語が良いかもしれません。
2、実は知らない劇場運営のお話し。
意外と知られていないのが、劇場経営の実情です。
スカラ座の人員構成をざっとご紹介しますと、まず、トップに「劇場総監督」と言う人がいます。そこから主に制作を担う「事務局長」。芸術面を担う「芸術監督」と別れ、それぞれに枝葉がついていきます。
「芸術部門」に関しては、「芸術監督」からさらに「舞台監督」と「芸術監督補佐」と言う、いわゆる出演者と舞台スタッフの専門分野に分かれて、人材運営はなされています。
では、経営面ではどうでしょうか?
実はイタリアの劇場は、公的助成を受けて活動しています。それに加えて、チケット収益、CD、DVD等の映像資料、そして民間企業のバックアップなどで、劇場の運営を支えているのです。
昨今は、アメリカのメロとポリタン歌劇場が、舞台のライブ映像を映画館で発信するなど話題を呼んでいますが、やはり劇場運営のためには様々なアピールが必要なんですね。
スカラ座、チケットの購入方法
直接購入とツアーに組み込む方法があります。
日程が決まっていて、英語が大丈夫と言う方は、スカラ座のHPで直接申し込むのが一番早いでしょう。観たい演目が決まっているなら、なおさらです。公式HPは会員登録が必要ですので、お忘れなく。
スカラ座公式HP http://www.teatroallascala.org/en/index.html
また、イタリア観光ツアーなど、オプションで組み込まれているものもあります。その場合は、旅行会社に全てお任せできますので安心ですが、ツアーは日程があらかじめ組まれていますので、演目が選べず、チケット代に手数料などがかかることは了承しておきましょう。
初心者でも楽しめるオペラ作品
初めてオペラを観るという方もいらっしゃるのでは?
ここでは初心者におススメのオペラを3作品ご紹介します。
ヴェルディ作曲オペラ「椿姫」
高級娼婦のヴィオレッタと青年貴族アルフレードの悲恋物語。
愛を信じたことがなかった娼婦ヴィオレッタは、アルフレードの純粋な熱愛に、初めて人を愛する喜びを知ります。しかし、やがて別れが訪れ、誤解が解け戻ってきたアルフレードの腕の中でヴィオレッタは天に召されます。
スカラ座では、マリア・カラスの当たり役として有名です。また、ゼッフィレリ監督の美しい舞台美術と演出でレパートリーとして残っています。
プッチーニ作曲オペラ「ラ・ボエーム」
19世紀のパリを舞台に、夢と芸術に生きたボヘミアンたちの愛の物語。
貧乏でも夢と芸術精神旺盛に生きていた若者たちの青春を描き、詩人のロドルフォとお針子ミミの愛と別れを描きます。
テノールのパヴァロッティとソプラノ、ミレッラ・フレーニの名コンビが客席を沸かせました。
ビゼー作曲オペラ「カルメン」
ジプシー女カルメンと、彼女に魅惑されて盗賊に身をやつしたホセの情熱的な恋を描いています。
タバコ工場で券か騒ぎを起こしたカルメンを牢獄へ連れて行こうとする軍人ホセ。しかし、そこで誘惑され彼女を逃がしてしまい、そこからホセの運命は狂っていきます。彼女のために盗賊に身をやつしたホセから離れようとするカルメン。誰にもカルメンを渡したくなかったホセは、彼女を刺し殺してしまうのです。
指揮者のカラヤンが好んで演奏したオペラです。自身が演出した映像も残っています。日本でも上演回数が多く、CMなどでお馴染みの曲もあり、楽しめる作品です。
まとめ
世界が認める「オペラの殿堂」、ミラノ・スカラ座をご紹介しました。
建物の荘厳さ、オペラの美しさだけではなく、やはり劇場そのものの歴史や関わったアーティストなどを知ると、楽しみが増えますよね。
映像も沢山残っています。是非、楽しんでくださいね!